【第751回】 肩関節をつかう

前から言っているように、正面打ち一教は合気道の極意技であると思っている。武道や武芸や芸能等では、最初に習う技が極意技である事が多いが、合気道では正面打ち一教が最初の教わる技である。更に、合気道は剣の動きを基本としているので、正面打ち一教はその剣の動きが最も現われる技だと思う。従って、剣の動きが上手くできなければ正面打ち一教も上手く出来ない事になるわけである。

正面打ち一教に対する剣の動きには、受けの攻撃の動きと、技を掛ける取りの動きがある。手刀で取りの相手を切っていく動きとそれを受けて捌く動きである。この攻撃と受けの動きが上手くいくためには手を剣として上手くつかわなければならない。

合気道は基本的には素手の動きであるから、手は剣としてつかうことになる。手の切る部分は手刀といい、手刀は、小指の付根(中手骨)から尺骨までの膨らんだ部分である。相手の攻撃の手はこの手刀で受けなければならない。この部分は、手を刀として見た場合、刃の面で唯一筋肉で膨らんでいる部分であり、多少力一杯打たれても痛さを感じない箇所である。更に、この手刀の部位によって、相手の手や体を打ち、切り、絡む、つかむ、払い、弾き、押さえ、引き、打ち落とし、かわしが出来るのである。
しかし、この手刀で相手の打ってきたり突いてくる手を捌くのは容易ではないので、練習が必要である。

手刀で相手を打つにしろ、受けるにしろ大事なことがある。
まず、「手刀の打ち方は、手全体を上げる。手先の手刀から上げては駄目である。そのためには肩の四つの関節(肩甲上腕関節、肩鎖関節、胸鎖関節、肩峰下関節)をつかって上げることである。そして打ち下ろす際は胸鎖関節から落す。」ことである。
手先からではなく、手全体が上がるためには、胸鎖関節を支点として鎖骨上を息と気を鎖骨の末端の肩鎖関節に流す。胸が拡がる。ここで肩鎖関節の下にある肩峰下関節および肩甲上腕関節が上下に動けるようになるから、手が上に上がっていく。後は、上下左右に広がっている気と力を胸鎖関節に集めて切り落せばいい。
これで正面打ち一教をやれば、これまでよりも上手くいくものと思う。上手くいくかどうかはわからないが、少なくともこの肩の四つの関節をつかってやることにする。

手刀を上手くつかうためには、肩関節をつかわなければならない。勿論、剣もこのように肩関節をつかわなければならないことになろう。二教裏を極めるのもこの肩関節である。更に、関節の柔軟運動でも四股踏みでも、また、船漕ぎ運動も、この肩の四つの関節をつかってやるといいようだ。
この肩の四つの関節は、有川定輝先生の教えであるが、この関節をつかうことは重要ということであろう。