【第749回】 腰を入れる

「偉大な力を、なおさらに練り固め磨きあげていくのが合気の稽古である。」との大先生の教えに従って、少しでも“偉大な力”を生み出し、そして練り固め磨きあげていきたいと思いながら稽古をしている。
その為に、これまでは、手は天地の気を手先から手首、肘、肩、胸に集め、足も天地の気を足先から足首、膝、腰、腹に集め、その胸と腹に集まった気を統一してつかうようにしている。また、剛の技づかい・体づかいで異質で大きな力が出るようにしていると書いた。
胸と腹に集まった気と力を統一し、そしてそれを手先と足先に流すと手と足は気と力で満ちる。偉大な力の働く土台ができたわけである。
それではこの潜在的な偉大な力をどのようにつかえば偉大な力になるかということになる。

手と足は、統一した胸と腹としっかり結んでいるので、統一した力は腰腹に集まることになる。しかしこのままの状態で手を腰腹でつかっても偉大な力は生じないし、相手の大きな力には対処できないものである。
それではどうすれば大きな力、偉大な力を出すことができるかというと、この状態から「腰を入れる」のである。

「腰を入れる」とは、腰腹を十字につかうということである。つまり、腰腹を前足の爪先の方向に対して十字、すなわち直角になるように返し、返した処で腰腹を地に下ろすのである。横の十字、そして縦の十字である。
因みに、腰腹とあるのは、腰と腹は別物であり、別々の役目がある、が一緒に働く。腰は腹の支点であり、腹は腰を支点として働くのである。
「腰を入れる」と、腹と手と足がガッチリと繋がり、そして力が充満し、そして腹、手、足だけでなく体が一つに統一されたと感得する。

この「腰を入れて」手と足と体をつかうと偉大な力が出てくる。諸手取呼吸法に対してもこれまでになかった力が出てきて、相手をそれまでにないように制する事が出来るようになる。
また、「腰を入れる」と、腹の前にある手が体の中心にある正中線上を動くようになる。この手は腰腹としっかり繋がっているので、引っ張られても抑えられてもぶれる事が無くなる。因みに、腰が入っていない手は、正中線から外れてぶれてしまうので腕の力となり、大きな力は出ないのである。

先ずは諸手取呼吸法で腰を入れて錬磨し、そして他の技(形)でも腰を入れて技と体を練っていけばいいだろう。
また、剣や杖などの得物を振る際にも、腰を入れて振るようにすることである。昔の武人と繋がり、武人の気持ちや感覚が分かるようである。
更に、四股も腰を入れて踏み、手関節や股関節の柔軟運動も腰を入れてやるのである。腰を入れてやると、必ず気と力が出る剛の動きになるはずである。

これまでの要因に、更に腰を入れることを加えることによって、これまで以上の大きな力が出るようである。
「腰を入れる」ことは、合気道は勿論のこと、武道やスポーツには必須要因であると確信する。