【第748回】 踵と掌底

合気道は相対で技を練り合って精進するが、いい技を生み出すためには大きな力が必要である。この大きな力を大先生は“偉大な力”と云われておられる。そして“偉大な力”は霊体の統一で産まれるものであり、この偉大な力を練り固め磨きあげていくのが合気の稽古であると、「霊体の統一ができて偉大な力を、なおさらに練り固め磨きあげていくのが合気の稽古である。」と教えておられるのである。霊を鍛え、体を鍛え、そしてその霊と体を統一して錬磨していきなさいということである。

今回はこの内の体が偉大な力を生むためにはどうすればいいのかを研究してみたいと思う。
偉大な力は只の力とは違うし、それを出すためには只の力を出すのとは違う、細心で非日常の体のつかい方をしなければならないはずである。
これまで書いてきたように、大きな力を出すためには、手は天地の気を手先から手首、肘、肩、胸に集め、足も天地の気を足先から足首、膝、腰、腹に集め、その胸と腹に集まった気を統一してつかえばいいと書いた。

今回はこの手と足の気の流れを更に細分化し、そしてそれを活用しなければならない事を研究する。
手である。手は手先、指の根元、手の平、掌底、手首、肘、肩、胸となり、新たに指の根元(1)、手の平(2)、掌底(3)が加わった。(下図)

この手の対照となる足は、爪先、指の根元、足底、踵、足首、膝、腰、腹となり、新たに指の根元、足底、踵が加わった。
この新たに加わった箇所を意識してつかう事によって、より大きな力が出るようになるのである。
手の指先から気と力を出そうとしても出ないものだが、指の根元を支点として出せば手先から大きな気と力が出るし、指の根元から先に気と力を出す時は手の平を思い切り開き拡げればいい。そして手の平から先に気と力を出す場合は、掌底を支点として気と力を発すればいい。これで掌底から手先までの手の部位は鋼のように頑強になり、気と力で満ちることになる。後は、手首、肘、肩、そして胸に気と力を集めたり、また胸から手先に気と力を出せばいい。

更に、指の根元、手の平、掌底は、足の指の根元、足低、踵と結び繋がっているので、手の指の根元がしっかりすると足の根元もしっかりし、手の平が思い切り開き拡げれば足底も同じように働き、掌底に気と力が充実すると足の踵も気と力で満ちることになる。また、逆にこの足の部位がしっかりすればこの手の対照部位もしっかりするし、また、足を上手くつかえば、手が上手く働くことになるわけである。
踵と掌底、手の平と足底、手と足の指の付根を意識し、そしてそこを十分活用すればより大きな偉大な力が出るはずである。