【第700回】 腹を縦横十字で

合気道は十字道とも云われるように、技と体、そして息は十字につかわなければならないと書いてきた。また、腹も十字につかわなければ技にならず、相手を導くことはできない。入身投げや小手返しで相手に頑張られる最大の原因は、この腹を十分に十字に返さないことにあるといえる。己のお腹を相手に向けたまま技を掛けたり、股関節か硬くて十分に十字になれないのである。

これまで腹の十字はお腹の面を足先と直角になることだと言って来た。これは重要なことであるが、実はこれだけでは十分な十字ではないのである。言うなれば、この十字は横の十字なのである。ということは、縦の十字があるわけである。つまり、横の十字と縦の十字が一緒になる事によって真の腹の十字になるのである。
実際に呼吸法を横の十字だけで腹をつかってやっても、十分に力が相手に伝わらないし、必ずどこかで力や技が切れてしまうものである。
横の十字に縦の十字を加えてやると、己の体重(体の重さ)は初めから最後まで相手との接点に掛かり、腹の十字づかいに合わせて相手が誘導されるようになるのである。

腹の縦の十字を片手取り呼吸法(右半身)で説明する。

  1. 後ろにある左足から右前足に重心が移動するわけだが、左足を阿吽のアーで息を腹に入れながら体重を地に下ろすと①、地から対抗力(気)が足から腹に上がってくるから②、その気を腹の股関節へ横に流すと股関節は若干右上に上がるのを③、右足に下ろす。縦→横→縦である。(以下同)
  2. 右足に体重が掛かると足元から力(気)が腹まで上がってくるので、腹を十字に反転させながら、息を吸って股関節を浮かせると、手を掴んでいる相手が浮き上がって付いてくる。
  3. 左脚を床に着け腹を反転しながら股関節を浮かせ、ンで相手を倒す
腹を縦と横の十字につかうと、腹の中は∞に動く。動きが切れないから、力も切れない。腹は体の中心である。技を掛ける際は体の中心よりつかわなければならないから、腹のその中の中心の中心からつかわなければならことになる。先ずは股関節を∞につかうのがいいようだ。

この腹を縦と横の十字につかう最大の特徴は、相手との接点、例えば相手が掴んでくる手に自分の体重を常にかけ続けることができることである。これによって体重(魄)の土台がしっかり保持できるので、後は心(魂)で相手を導けばよくなるのである。魂の学びの合気道に通じるようである。

呼吸法は勿論、一教でも四方投げでも、すべての技(形)で、腹を縦横十字、∞でつかわなければならないと考えている。これまでの技とは異質になるようである。