人類は有史以来、何万年、何千年と自然と戦い、他部族や他人と戦ってきて、勝ち残ったものが今の物質文明に生き残っている。人類は自分たちのこれまでの戦いを克服してきたことを意識的、無意識的に誇り、自分の力の強さを誇っているように思える。
合気道の稽古でも、よほど注意しないと、自分の力を過信したり、頼ったりしてしまう有史以来蓄積された本能が頭をもたげてくる。そしてその力に頼り、技をかけるとき手を振り回してしまう。
手先だけの力では、大きな力も出ないし、合気道で求めるハイグレードな力も出ない。強力でハイグレードな力は、自分の体重、地の引力と斥力、それにスピードと拍子などを掛け合わせたところから出てくる。そしてこれを上手く活用し、求める力を出するために絶対必要なことの一つは、「肩を貫く」ことである。肩が貫けていなければ、手先の力と下半身からの力が肩で引っかかって止まってしまう。肩に力を引っ掛けて無理してやり続けると、肩を壊してしまうことになる。
肩を貫いた体をつくるためには、肩が貫ける稽古をするのがいい。合気道にはそれに相応しい運動と形があるので、肩を貫くことを意識してその稽古をするのがいいだろう。次の運動と形は肩を貫くためには分かりやすいし、また、肩を貫かないと上手くできないものである。
1.肩貫き運動