【第330回】 柔軟で締る指
合気道の技は手でかけるから、手は大事である。手といっても、手根、手掌、手刀、手背、それに指などがあるが、今回はその内の指について研究してみたいと思う。
人は手を長年使っているが、手は無意識に動いてくれるので、技の稽古においてもあまり注意しないで使っている。とりわけ手の指となると、意識して使っていることも、意識して鍛えることも、あまりしていないようだ。
しかし、技が効くためには、指先に力が集中しなければならない。だから、指も鍛えなければならないのである。
指はどうあるべきかというと、一言でいえば、よく締り、よく伸びることである。それには、次のような指になればよいのではないかと考える。
- 手の平を開いて指を伸ばした時、指先が曲がったり歪まずに、まっすぐになる
- 五本の指にある3つの関節の各々が、それぞれ独立して直角(十字)に折れる
- 手を握り締めたら、折れた指の各関節が直角になり、そして
- 手の平に隙間ができずに指と密着する
本来は、相対稽古での技稽古でこのような指をつくっていくのだろうが、なかなか難しいようだ。従って、自主稽古で次のような鍛錬をするのがよいだろう。
- 指の3つの関節が直角になるように、反対側の親指の腹で押しつける。その際、意識を入れ、息に合わせてやることが大事である。息はまず、息を入れながら(吸う)、押す親指で押される指を結び、結んだところから息を出しながら(吐く)押して行くのである。最後は多少痛いだろうが、心地よい痛さのはずである。
これを親指を含めて5本ともやる。
- 次に、直角になるように押しつけた指を、反対の親指と人差し指で挟むようにして、反らすように伸ばすのである。これも、息を吸いながら極限まで伸ばし、そこから息を吐きながら更に伸ばす。
はじめは硬くて、なかなか効果を実感できないだろうが、毎日やっていれば、それなりに柔軟になってくるものだ。それを信じ、自分の指を信じることである。ただし、毎日である。なぜ毎日やることが必要かというと、人が生きている周期単位が一日であるからだと思う。
しかし、この指の鍛錬も、基本的には相対稽古での技稽古でやるべきである。そのためには、相対稽古で次のことに注意してやってみるとよいだろう。
- 相手の手や腕を五本の指でしっかり握りこむ。特に、一教から五教の固め技は、しっかり握りこんで抑えなければならない。中でも一教はそのための最適な鍛錬技である。指の締りの程度は、この一教の抑え方で分かるし、この一教程度にしか他の技、二教、三教等などはできないものである。一教が合気道の極意技であるといわれるのも、この指の締りにも隠されているように思える。
- 指が締るということは、指先に力が集まるということである。つまり、体の中心である腰腹からの力が、指先まで通ることである。さらに、腰腹から指先までの力の通りをよくするためには、手先のカスも取り除いておかなければならない。
指が柔軟になれば、指は締るようになる。指が締るということは、腰腹からの力が伝わっていることにもなる。腰腹の力が使えるから、技もつかいやすくなる。指も鍛えていきたいものである。
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