【第928回】 手刀てがたなを強靭にし、つかう

気で技をつかい、息陰陽水火で体をつかっていくとまだまだ身体が鍛えられていない事に気づく。しかしその鍛えられていない箇所を強靭にし、つかえば上手くいくことが分かってくる。
今回気づいた箇所は手刀部である。この手刀が強靱でないと相手が思い切り打ってくる手や掴んでくる手に制されてしまい、体が動かなくなり、技にならないのである。逆に手刀が強靭で、その強靱な手刀をつかえばいい技が生まれるのである。

手刀には、広義の手刀と狭義の手刀があるので、注意を要する。手を手先から肘や肩先まで刀としてつかう広義の手刀と、手掌の掌底から小指球の間の箇所の狭義の手刀である。手刀にはこの二つの手刀があるのである。

「合気道の動きは剣の理合であるともいわれているほど、その動きは剣理に則している。故に徒手における合気道の手は、剣そのものであり、常に手刀状に動作している。」(合気道技法 P.44)と言われるように、合気道の技は広義の手刀を剣の理合い、剣の動き、剣をつかうようにやればいいが、この広義の手刀は狭義の手刀が強靭で、理合いでつかわれなければならないのである。つまり、狭義の手刀が強靭で、理合いで動けば広義の手刀も上手く動いてくれるという事である。
ここでは狭義の手刀を研究する事になる。

手刀が強靭であるとはどのような状態なのか、自分で実感できないだろうからよく分からないだろう。気を出し、息陰陽水火で身体と技がつかえるようにならなければ難しいと思うからである。だからそれが分かるためには強靭な手刀のイメージを持てばいいと思う。先人の強靭な手刀がどのような姿形なのか、どのようにつくられているのかを映像で見るのである。その例を下記の写真で示す。大先生の手刀と有川定輝先生の手刀である。
この写真は次のようなことを教えてくれる: 実力のある名人、達人ならこの写真からだけでも更なる教えを見つけるだろうが、私の場合は今の処こんな処である。
いづれにしても手刀の働きは重要なのである。
『合気道技法』では、「この手刀は、全身の力の集約点である人体の重心から働く力が直結している故、正しい体の動きによってこれを使用した場合、合気道でいう、力強い呼吸力の発揮となってくる」と、狭義の手刀の重要性を説明しているのである。


参考・引用文献 『合気道技法』植芝盛平創始者監修 植芝吉祥丸道主著 (光和堂)