【第906回】 曲り真っすぐ

盆栽は世界中で楽しまれているという。また、盆栽はその名木だけを愛でるのではなく、名木とそれを入れる鉢と一体で愛でるという。つまり、名木と鉢が一体であるという事であり、鉢も大事なのである。
この盆栽鉢づくりの名人に中野行山という人がおり、国内外問わず、盆栽家から評価が高く、宮内庁からも制作依頼があるほどの盆栽作家であるという。
これはテレビを見ていた時にある一言が耳に入って興味を持ち、後で調べて分かった事である。
その一言は「曲がり真っすぐ」である。只の直線ではなく、丸く曲がっているのがいいというのである。工業的な真っすぐでは固くて、つまらないという。

中野行山作の盆栽鉢
この「曲がり真っすぐ」と聞いた時、この意味を正確に理解できたかどうかは分からなかったが、合気道の技もそうでなければならないとピントきたのである。曲がりくねった体の動きの技ではふにゃふにゃで力も出ないし、安定感もなく、美しくもない。また、直線的な真っすぐな動きの技は人工的なロボットの動きのようでつまらないし、美しくもない。曲がりと真っすぐの両方が必要なのである。

合気道の技は「曲がり真っすぐ」でなければならないのである。それでは合気道の技では何がどう曲がって真っすぐになるのかということになる。まず、手先は真っすぐに動かなければならない。しかし、手を手で動かすと直線的な動きになるが、曲がりがない。曲がりがあって真っすぐに動くためには、手先と腰腹、足、顔をむすびそれらで手をつかわなければならない。合気道の動きは、円の動きの巡り合わせであるから、これを「曲がる」と感得出来るのである。「曲がり真っすぐ」の技は力強く、安定感があり、自然で美しいと実感する。

「曲がり真っすぐ」は合気道の徒手技だけでなく、剣もこれで振るといいし、これでやらないと刃筋が通らない。また、居合でもこの「曲がり真っすぐ」でやれば剣が抜ける。体(腹、足、顔)を返すと剣は真っすぐ抜けるのである。体を固定して真っすぐつかうのも、剣を曲がしてつかっても駄目である。
これからも「曲り真っすぐ」に心がけて体と技をつかっていこうと思う。