【第904回】 AIと合気道
AIが話題になっている。仕事や学習につかうと便利だが、問題もあるようだ。そこで自身がAIを合気道につかうことが出来るのかどうか、つかった方がいいのかを考えていた。合気道の論文を書いたり、技の稽古の精進に役立つかどうかである。例えば難解な『武産合気』『合気神髄』を分かりやすく解釈してくれるか、また、「気」とか「魂」とかの言葉について説明できるのか、また、「魄が下になり、魂を表にする」などの大先生の教えを解釈してくれるかどうか等である。
そしてChatGPTで試してみようかと迷っていると、朝日新聞でAIに対する興味ある論考を見た。そのタイトルは『AIは言葉の意味を理解していない』である。慶応大学の今井むつみ教授の論考である。教授は認知科学が専門で人の言語学習に詳しいという。
教授は次のカッコ内の事を云っている。その下にこの件でAIが合気道に有効なのかどうかの私の考えを記した。
- 「数や色、愛など言葉には抽象的な概念を指すものもある。言葉の意味を真に理解するには、現実世界から受け取る情報について、身体的な感覚を持つ必要がある。例えば、視覚・聴覚障害があったヘレン・ケラーは、冷たい水に触れながらwaterという言葉を教わったとき、初めてその意味を理解したし、人は“梅干し”と聞くと口にツバが湧く。こうした言葉と感覚が結びついて理解しているのである。が、身体のないAIは言葉の意味を理解していない。」
合気道も頭だけでは大先生の教えは理解できず、身体で感じ、理解しなければならない。取り分け真の合気道(武産合気)になると、目に見えない次元の修行になるわけだから尚更である。例えば、五体のひびきとむすび、宇宙との一体化などは頭では理解出来ないからAIには無理だろう。
- 「AIは最初に膨大なデータが与えられ、学習が始まる。人間の赤ちゃんは、自分の身体感覚に結びついたほんの少しの知識から、新たな知識をつくったり、修正し、それを繰り返すことによって知識体系を大きくしていく。」
合気道の修業法は赤ちゃんと同じであり、AIではない。赤ちゃんと同じように少しずつ身体感覚にむすびつけて身につけ、精進するしかないということであり、AIではないということである。
- 「AIは言葉と感覚が結びつく知識体系を持たないので、リンゴが木から落ちる理由を説明する万有引力のような“法則”を引き寄せる事はできない。」
合気道は宇宙との一体化が目標である。そのために宇宙の法則を見つけ、その法則を技に取り入れていかなければならないのに、AIは法則を見つける事ができないとなれば、AIに期待できない事になる。
ということで、今の所、AIにはお世話にならないことにし、これまで同様、地道にアナログの修業を続けることにした次第である。
Sasaki Aikido Institute © 2006-
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