【第894回】 頭の働きは両手にまかす

「第887回 頭の物理的な働き」で「頭は精神的だけではなく、物理的・物質的にも働いてもらわなければならないのである」と書いた。その後も頭をつかうようにして技をつかうと、頭と腹と足と手がしっかり結びつき、体、手に大きな力が集まり、手に大きな力が生み出され、それによって技が上手くつかえるようになったようである。
これは法則であり、大発見だと思っていたところ、これも大先生は教えておられた事がわかった。やはりいつもの通り、大事なことは、大先生はすでに教えて下さっていたわけである。
その教えは、「『からだ』は五臓五体といって造り主に神習い、足は高御産巣日、神産巣日となって、つまり霊系の祖と体系の祖に神習い、三位一体である。気はちょうど、三角法になっている。そして頭の働きは両手にまかす。これが伊邪那岐、伊邪那美の大神様の気を受け、神習うていかなければならない。そこで『からだ』は五臓五体、造り主に神習う。また足は、胴の動きは両足に持っていかなければならない。これが高御産巣日の霊的な祖、これが体的な祖に結んでいかなければならない。」(合気神髄P146)である。
つまり、「頭の働きは両手にまかす」ということである。これまでこの意味が分からなかったが、技で頭をつかうようになったから分かったということである。以前は、頭で考えて手を動していたのである。従って、技も動きも人為的で、不自然であったわけである。

頭の働きは両手にまかすとは具体的にどのような事なのか、頭をどのようにつかうのか、手がどのように働くのかを記する。
以前にも書いたように、技は主に腹、両手、両足で掛けるが、最終的に技を掛けるのは手であり、動かす順序は腹⇒足⇒手であった。そしてこれに頭が加わり、頭⇒腹⇒足⇒手で掛けなければならない事が分かったわけである。頭が動くと腹、足、そして手が動くわけだが、技をつかう際は、動いた頭の前面、つまり顔の前に手が来るように顔で手を導くのである。手を動かすのではなく、顔に動かされるのである。顔と手先(手の平)がしっかり繋がると手は自然と動いてくれるから、手を動かさなくてもいい。これが“(両)手にまかす“であると感得する。頭の働きとはこの場合物理的な働きである。
手が無意識で動くためには、まず手を頭でつかわなければならないわけである。頭を(物理的に)つかわずに手だけでやっても手は働いてくれない。
また、頭にまかされた手が自然と動くと無駄のない動きになる。美であり、そして真であり善である。更に、魄が下になって魂が上になる感覚が分かる。また、手がこのように働いてくれると合気道をやっているのだなと実感できるものである。
因みに上記の大先生の教えの中の「足は、胴の動きは両足に持っていかなければならない」とは、胴(ここでは腹とした)が先に動いてから足が動くということと、足は胴(腹)でつかえということであると考える。