一寸前まで腕が上がらないような痛みが上半身にあった。腕を上げたり、後ろに回すと肩や上腕に痛みが走るのである。日中起きている時は注意するので何とかなるが、夜寝ている時は無意識に手を上げたり下ろしたりするので激痛が走り、目が覚めてしまう。それも一度や二度ではなく酷い場合は二時間おきに起きてしまうから、熟睡も出来ない。痛くて目が覚めたら、腕や肩をぐるぐる回し、痛い個所をほぐしてから寝るを毎晩繰り返していたわけである。
何故、急に腕や肩が痛むようになったのかを考えたが、はじめは年のせいであろうと思う事にしていた。そしてその内に、これまでのように直っていくのだろうと思っていた。合気道の稽古では多少の違和感はあったが稽古にそれほどの支障はなかったから、それほど大きな問題とも思っていなかった。
しかし、この痛みが2,3か月も続くと、どうも自然と直ることもないようなので何とかしなければならないと思うようになった。
夜、寝ている時の痛みで目が覚めるのは相変わらず続いているが、これはなんとも出来ないから、目が覚めている時にやるしかない。問題を認識し、その解決策を見い出せばいいわけである。
先ず、不思議に感じたのは、合気道の道場での相対稽古で技を掛けている時は腕や肩に痛みが走らないのに、受けを取ると、時として痛みが走るのである。ここから、これまでの稽古で得た事から考えて、力を外に出す、つまり遠心力をつかう場合は痛みがなく、力を内に引く求心力では痛みがあることがわかったわけである。故に、技を掛ける際も、受けの時も、そして日常生活でも力は内に引かずに、外に出すようにすることにした。
力を外に出すに関係して、これまでの稽古で、力は外に出すが、体の表に出さなければならないという事も学んだので、力を腹や胸の体の裏側から背中や腰側の体の表に出さなければならないと悟った。
力を体の裏から表に出すためには、腹中の裏の力を仙骨が表の力に変える事が出来ることを、これまでの稽古で知っている。つまり、腕の痛みを取るためには仙骨が重要な役割を担っているはずだと考えたわけである。
仙骨は全身の骨組みを支える”要の骨”とも云われるように、全身の骨と結びつき、全身の骨を統括している“骨の要”である。仙骨に上手く働いてもらわなければ、他の骨は働けないし、どう働けばいいのかわからない。それが最も分かり易いのは、腰を下ろし両足を開いての開脚運動である。息を吐いて上体を倒し止まったら、息を引き仙骨に息(気)を入れる。仙骨が緩み、そして全身の骨が緩むから上体を下に下せる。更に引っかかって下ろせない場合は、骨が引っ掛かっているわけではなく、筋肉が引っ掛かっているだけなので、息を引くを何度かやっていけば筋肉は柔軟になる。最後は駄目押しで息を吐いて上半身を床に着けるようにする。イクムスビの息づかいで仙骨をつかうということである。
ここまでは以前もやっていたことなので、これだけでは腕の痛みは解消されない。そこで更なる仙骨の活躍が必要だと考えたわけである。
そのために仙骨自体だけでなく、仙腸関節周辺の筋肉をほぐし、鍛えることである。これを世間では仙骨ストレッチ等といっているようで、仙骨ストレッチは、仙骨周辺の筋肉をほぐし、骨格を整えることであると云う。
そこで毎朝、目が覚めると床の中で仙骨ストレッチを、仙骨を意識して真面目にやる事にした。というのは、この運動は以前から、眼を覚ますために何となくやっていたのだが、これからは仙骨を鍛えるためにやるとなったわけである。その方法は次の通りである。
床に背中と腰をつけ、