【第829回】 体を槍につかう

前回「第828回 三角に体をつかう」で技をつかう際、体を三角につかわなければならないと書いた。三角(△)に入身してから体と技をつかわなければならないということである。

心を丸く体三面に開き、△に入身して体と技をつかっていくと、更なる大先生の教えに接することになった。それは、「合気道は従来の剣、槍、体術を宇宙の和合の理によって悟ったものである」(合気神髄 P.109)である。
これまでその教えには何度も出会っていたが、よく分からず無視したり、読み飛ばしていたものである。
合気道は剣の理からきていることは知っていたが、槍からもきているということである。これまでは槍が合気道の技に関係しているなど想像できなかったので、槍は無視してきた。

そして冒頭にあるように、三角に入身して技をつかっていくと、この左右の手と体幹・腹胸でできる△こそが槍であると感得したわけである。
また、大先生は、「技は、すべて宇宙の法則に合していなければならない。宇宙と結ばれる武を武産の武というのである。武産の武の結びの第一歩はひびきである。五体のひびきの槍を阿吽の力によって、宇宙に拡げるのである。五体のひびきの形に表れるのが「産(むすび)」である。」(合気真髄 P86,87)と教えておられる。
つまり、三角体、三角の入身の槍は宇宙の法則に合しているということ、宇宙と結ばれ、武産の武であるということ、五体のひびきから槍になること、この槍を阿吽の力(阿吽の呼吸)によって宇宙に拡げる、つまり、技に拡げるということになろう。簡単に言えば、槍から技が生まれるということになろう。

従って、如何なる合気の技も、初めは槍でつくところから始めなければならない事になるだろう。正面打ちであろうと、片手取り・諸手取であろうと、先ずは槍の入身から始めるのである。これまでの三角体から槍で入身するわけである。手を刀のように横につかうのではなく、縦につかうと云う事である。強烈な力が出るし、むすぶ力(引力)が増し、技の切れが違ってくる。

体術の稽古で、この槍での入身の稽古をしていけばいいが、更に鍛えたければ、杖の突きの素振りでこの三角の入身の稽古をすればいいだろう。
これで合気道は、剣、槍、体術の理によって出来ている事が分かったようである。