【第851回】 十字々々の十字道

開祖は「十字つまり合気である」とし、合気道を十字道とも言われているほど十字を重視しておられた。その好例としての道歌が「天地の精魂凝りて十字道 世界和楽のむすぶ浮橋」であろう。また、合気道を合気十(どう)とも次のように歌われておられる。
「ありがたや伊都とみづとの合気十(どう)ををしく進め瑞の御声に」
「千早ぶる神の仕組みの合気十(どう)八大力の神のさむはら」

合気道の技は十字で構成され、その技をつかうためには体と息を十字につかわなければならないはずなので、十字に技と体と息をつかうように稽古してきた。腹を十字に返す、足が左右の足で十字にする等である。
しかし、これぐらいの十字では合気道を十字道、合気十というのはおこがましいし、まだまだ十字があり、つかわなければならないものがあるはずだと考えていた。そして最近それがまた分かったのでそれを記すことにする。これで合気道は確かに十字道というに相応しいと思えるようになった。

今回は主に体の十字について書くことにする。技をかけるにあたってつかう体の主な部分は、腹と足と手である。まずは、この三つの部位を十字につかわなければならないことになる。
また、これらの部位の十字には各々縦の十字と横の十字があることである。つまり、腹と足と手の各々の縦の十字と横の十字、そしてそれらの十字を腹と足と手の十字と連動してつかわなければならないということである。

横の十字から説明する。尚、横や縦の十字などという言葉はないが、必要なので私がつけたものである。縦の十字に対する十字ということである。
横の十字は外から見える十字である。腹を足先に対して十字に返す、足が前足と後ろ足で十字になること、手は親指以外の指方向と親指方向と十字に進めてつかうことである。(右図)

次に縦の十字である。外からは見えにくい十字である。
まず、腹の十字は布斗麻邇御霊、伊邪那岐と伊邪那美の御霊の十字である。腹からの力はこの十字から出て来るはずである。
足の十字は、足が地に着く時は息を吐き、|に、足が上がる際は息を引き、━に、そして反対側の足が地に縦に下りると足は十字十字に働く。
手は、以前から言っているように、イクムスビの息づかいで分かり易い、イーで息を吐いて手を縦に伸ばし、クーで息を引いて縦に対して横に手を拡げ、そしてムーで息を吐いて手を伸ばすと、縦の十字につかうのである。

尚、十字は水火でできる。水は吐く息・気であり|であり、火は引く息・気であり━である。この|の水と━の火で十字になるのである。息の十字である。

合気道は十字からなる宇宙の営みの技を、これらの十字々々で体と息・気をつかっていくわけだから、合気道は確かに十字道であり、合気十であると実感出来るようになった次第である。