【第810回】 肩で△、□、○を

相対稽古で技を掛けて、技と体を練っているが、まだまだ力不足を感じる。力不足なのである。力とは体力、腕力などの体の力と気の力である気力である。何故、力不足なのかを考えると、その原因は二つあるようだ。一つは、身に備わっている力が十分に強くない事。もう一つは、その身に備わっている力のつかい方に問題があることである。
長年、稽古をしてきて、年を取ってきているので、これから更に力をつけて行くのは容易ではないし、力がついたとしても高が知れているだろうから、これはあまり期待できない。
従って、二番目の問題を解決した方がいいということになる。

最近、稽古をしていて、力が十分に出ないのは肩にあることに気づいた。肩が弱く、腰腹や胸、下半身からの力が手先に十分流れなかったり、戻ってきてしまうのである。
そこで技を掛ける際に、自分の肩を観察してみると、手先と腰腹は結んでいるが、これだけでは大きな力が出ない事が分かった。名人や達人になれば、これでも大きな力を出すことが出来るはずだが、我々凡人には何かが欠けているということである。それは肩が強靭ではなく、そして十分に働いていない事である。
手先と腰腹を結んで、腰腹で手をつかう事は重要であり、必須である。それ故、肩を貫く必要があったわけである。しかし、今度は肩を強固にするわけだから、肩を貫くことに相反するわけである。合気道のパラドックスである。
従って、肩のつかい方の問題の原因は、肩を貫く体のつかい方をやってきたことということになる。だが、肩を貫いて技と体をつかう事は、この後も必須なのである。

それでは、肩がしっかりし、強靭になるとどうなるかというと、

△と□(○は手先の先端の軌跡である)
△、□、○が出来ないという事は合気道ではなくなるということになるから、△、□、○ができるように体をつかわなければならない。故に、肩を強固に鍛えることが必要になるわけである。これを大先生は、「合気道は、大自然の絶対愛を基として、体を△に象り(かたどり)、○を中心に、気により△□の変化と気結び、生産びを身体に現わし、生み出しつつ気魂力を養成し、皆空の心と体を造り出す精妙なる道である。」と教えておられるのである。

ここでは、△、□、○を肩を中心に考えたが、他の△、□、○の考え方や技と体のつかい方もあるはずである。