【第783回】 信じる事が大事

合気道の修業をしていく上で大事な事は信じることだと思う。特に何を信じなければならないかというと、自分自身と目に見えないモノである。自分自身の体と心、そして目に見えない宇宙の営みである。これが信じられなければ、合気道の修業は進まないはずである。
今の世は信じる事が難しい。下手に信じれば、おれおれ詐欺などの被害に遭ってしまうし、連れ去られたり、金銭や財産を取られてしまうからである。
もう一つ、信じることを難しくしているのは“科学”の普及である。物事はすべて科学的でなければならないという風潮である。しかし、科学の基本は先ず疑う事から始まるという事である。その疑いが晴れて初めてそれが科学的に認められたという事になるわけである。
また、科学で問題なのは、すべてが科学で解明されると思うことである。取り分け、程度の低い科学者や一般人はそう思っているようである。しかし、一流の科学者は物事に科学の限界を知り、科学の絶対性を信じていない。科学で解明できない事の方が、解明できているものに比べて断然多いという事を知っているのである。宇宙の物質で解明されているのはほんの数パーセントだけで、後は未解明なのである。
更に、宇宙や万有万物がどのように生まれたのかなどほとんど解っていない。この点に関しては、合気道の方が進んでいると思っている。

人は概して見えるモノを信じ、見えないモノを信じないものである。また、自分が出来る事は信じるが、出来ない事は信じない傾向にある。更に、自分の生活に関係するものは信じ大事にするが、生活に直接関係ないものは無視したり、大事なことと信じない。合気道の世界にもこの傾向はあるようである。

合気道の修業は顕幽神界の修行である。見える世界の顕界だけの稽古ではない。目に見えない幽界の稽古もしなければならない。そのためには、目に見えない幽界・神界を信じなければならない。
また、合気道は宇宙との一体化のための道であるわけだから、宇宙を信じなければならない。宇宙の営みや法則があること、それが働いていることを信じなければならない。例えば、陰陽十字や布斗麻邇御霊である。宇宙は布斗麻邇御霊の営みで産まれ、活動しており、その基本の営みの姿は陰陽十字であるということである。
先ずは、これを信じなければならない。そして次に、これを信じる根拠、確認が必要になる。その確認は合気道の技と体ですることになる。この陰陽十字、布斗麻邇御霊で技と体をつかい、宇宙は陰陽十字や布斗麻邇御霊で創られ営んでいることを確認していくのである。これでそれが確認でき、そして真から信じることができるようになるわけである。このためには、自分自身の体を信じなければならない。体を信じれば、体はこれはいい、悪い、ここをこうした方がいいとか教えてくれる。また、時には、体自身で動いて導き教えてくれる事もある。体を信じ合うためにも、体との対話も大事である。

先ずは、信じる事である。