【第752回】 法則を見つけ、法則に入り、法則の動きに取り込む
先輩の教えもあり、黙って10年合気道の稽古を続けた。これで合気道の基本の形を覚え、そして合気道の基本の体も出来たと思う。これによって稽古相手投げたり抑えたり出来るようになって、これで合気道が分かったと思った。この気持ちのいい稽古は10年、20年は続いたようである。
しかし、その内に知らない相手やこれまで稽古を一緒にしなかった先輩などと稽古をすると、これまでのように思うように投げたり抑える事が出来ないことが多くなった。また、これまで一緒に稽古仲間にも、技が効かなくなってきたのである。
ここで自分が天狗になっていたこと、まだまだ合気道の技が出来ていない事、更なる稽古をしなければならない事などを自覚し反省するのである。
この次元から抜け出し、更に上達するためにはどうしなければならないのかを考えたが、なかなか分からなかった。後で分かるのだが、これは他人が教えられる事ではなく、自分で見つけて、実践していくほかないことなのである。
多くの合気道の稽古人はこの状態にあると見ている。この状態を経験し、試行錯誤を繰り返して至った今から思えば、この次元から抜けだし、更に上達するためには、次のような稽古をしていけばいいのではないかと考える。
- 大先生の教えを学ぶ: 『合気神髄』『武産合気』を何度も繰り返し読んで、合気道とは何か、合気道の稽古の目標、技とは何かなどなどを知る事である。両書は難解であるから、一度や二度で分かるはずがない。読書百遍意自ずから通ずである。面白いことに、己の技の実力程度にこの書が分かるようなので、技を磨けばそれだけ理解できるようになるし、書をより深く、多く理解できるようになれば技が上達するという相乗効果があるようだ。
- 法則を見つける: 合気道の技は宇宙の法則に則ったものである。宇宙というのは、すべての時間と場所ということである。つまり、宇宙の法則とは、現在だけでなく、過去にも未来でも有効であり、そしてまた、その場だけでなく、外国でもどこでも有効な法則であるということである。例えば、最も基本的な宇宙の法則は陰陽十字である。
先ずは、陰陽十字の法則を見つけることにする。
足は右左交互に規則正しく動いている事を見つけるのである。足の陰陽の法則に気がつけば、手も陰陽に動いている事がわかるはずである。
次に十字である。これまで書いてきたように、手、足、腰腹は縦横の十字で動いているが、それを自分の技と動きで見つけなければならない。
法則は勿論これだけではなく、無限にあるから、それを一つづつ丹念に見つけていかなければならない。
- 法則に入れ込む: 法則を見つけたら、その法則を身に付けなければならない。見つけただけでは学問であるが武道ではない。武道では理と技の両方が揃わなければならない。
更に、例えば、陰陽十字の法則が理と体で分かったなら、すべての技(形)をその法則に組み入れていくのである。得意な技では上手くいくが、不得意な技や複雑な技には難しいだろうが、この法則に則ってやるのである。段々と技は陰陽十字でないと効かない事がわかってくるはずである。
- 法則の動きに取り込む: そして相対稽古での相手を、この法則の中に取り込んでしまえばいいのである。十字からの円の中に取り込んでしまうのである。合気道の技は、円の動きの巡り合わせと云われているが、この円の動きに取り込んでしまうのである。
法則の動きに取り込まれれば、相手は反撃したり頑張ったりすることはなくなり、我彼一体化した技になる。
稽古を続けて行きづまったなら、この「法則を見つけ、法則に入り、法則の動きに取り込む」をやってみたらいいと思う。勿論、これだけでは行き詰まりからの脱却は難しい。他にも沢山やるべき事があるからである。
しかし、大事な事は何かのきっかけが必要である。これはそのきっかけとなるはずのものである。このきっかけが上手くいけば、次に進んでいけるはずである。
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