【第734回】 胸を開く

日常生活は勿論のこと。武道の世界でも胸を開くことは大事である。胸を開くとは胸を拡げる、胸を張ることであるが、ここでは胸を開くとする。胸を閉じるのと反対である。
日常生活で胸を開かずに、胸を閉じた姿勢は、所謂、猫背であり、年寄りによく見る、陰気で元気なく、力がなさそうな姿勢で、良いところはない。
武道でも、胸を開かない姿勢は年寄りに見えるし、大きな力が出ない。
何故、胸を開くかというと、胸を開くと背中が体(基点)となり胸が用(働き)となるから大きな、安定した力が出るからである。
胸が開いていないと、胸も背中を十分に働くことが出来ず、大きな力が出せないのである。道場での相対稽古で技をこれでつかえば分かるはずだが、剣を振れば更に分かり易いだろう。

猫背の姿勢では力が出ないだけでなく、この姿勢では肩こりになってしまう。体側の中心を外れて前方にくる腕の重さが肩にかかり、肩がこってくるのである。(イラストA)
胸を開けば、腕は体側の中心に下り、腕の重さは肩にかからず(イラストB)、大胸筋と繋がるので、肩こりがないだけでなく、腕を結んだ大胸筋がつかえることになる。これが胸を張ったということになるわけである。
この胸が張った状態で技をつかえば、相手の力に返されない力が出、そしていい技がつかえることになる。

次に、それでは胸を開くためにはどのようにすればいいのかということになる。胸を開く方法である。それは難しいことではない。誰でもすぐに出来る。高齢者の猫背も治るはずである。
それは、肩を上げて胸を開けばいい。この方法は、合気道を稽古していればすぐに理解できるはずである。何故ならば、十字の法則に則っているからである。十字の法則とは、宇宙の営みと、宇宙の法則に則って、技と体は縦、横十字につかわなければならないということである。
一般的には、胸を開くために、只、胸を開こう、拡げようと横だけに動かそうとしているようだが、あまり効果がないはずだし、体を壊すことになるだろう。

胸を開いて、若々しい姿勢で生活し、そして稽古ではいい技が出るようにするのがいい。