【第725回】 折れ曲らない足

これまで折れ曲がらない手については再三書いてきたが、今回は「折れ曲がらない足」である。手が折れ曲がったのでは、腰腹との結びは切れてしまったり、必要な力が戻ってしまうので、手は名刀のように重厚で弾力があり、折れ曲がらないものでなければならないと書いた。実際に技をつかう際に手が折れ曲がってしまうようでは、その技は効かないものである。

さて、今回は足である。足は膝から足首・爪先までの部位と膝から腰までの部位があるから、この両部位の足が折れ曲がらないということになる。
それでは何故、「折れ曲がらない足」なのかということになるが、魂の学びの稽古に入れるとこれが大事になるようだからである。天の呼吸や地の呼吸で技を産むためには、天の息を受け、地の息を出すためには足が肝心なのである。足が十分働いてくれないと魂が生まれないし、技も出て来ないのである。

足の折れ曲がりの問題の第一は、屈伸した場合などに膝が足先より先に出るなど、垂直に真っすぐにならないことである。これでは技を掛けた時効かないだけでなく、いずれ膝を痛めること必定である。準備運動でのストレッチなども注意しないといけない。

次の問題は、膝や腰をねじる事である。ねじることによって足も脚も折れたり曲がってしまうのである。このねじれを避けるためには、腰腹を十字々々に返してつかうことである。腰腹から十字に動かすことを返すといい、肩などの腰腹以外の箇所から動かすのをねじるという。ねじるのは危険であり、膝も腰も痛めるものである。

また、足が折れたり曲がらないためには息づかいが大事である。息で足をつかうのである。天の吐く息と地の引く息を合わせてつかうのである。息を吐いて地に体が落ちると、その吐いている息で体が上がってくる。これが日の呼吸と月の呼吸である天の呼吸であろう。息と体が上がってきたら、今度はそれに合わせて息を引き(地の呼吸)、そして降りるのに合わせて息を吐く(天の呼吸)のである。

相対稽古で、この息づかいで体と技をつかおうとすると難しそうであるが、実生活で誰もが日常やっていることなのである。
それは普段の歩きである。誰でも健康で元気な人は、この天地の息づかいで歩いているのである。高齢者や体の不自由な方の歩きが上手くいっていない、つまり不自然なのは、特に、月の呼吸が出来なかったりやっていないからだと見る。若くて元気な若者は、日と月の呼吸のバランスが取れているので自然に歩いているのである。

また、お能の舞手の足は折れ曲がらず、そしてお能の歩みが美しいのもお日様とお月様の天の呼吸と潮満潮干の地の呼吸のコンビネーションがいいということになるだろう。

更に、四股踏みでも、このお日様とお月様の天の呼吸と潮満潮干の地の呼吸が合すれば、足は折れ曲がらずにスムーズにできるようである。