【第689回】 空の気を解脱して真空の気に結ぶ

大先生はよく、突然、我々が稽古している道場にお見えになりお話をされた。2,3分と短い時もあれば、10分、15分と長いときもあり、時間はまちまちだった。只、いつも共通していることは、大先生のお話は難解で、ほとんど分からなかった事である。それは私が馬鹿だったからではない。先輩方も分からなかったのだから・・・。先輩方に大先生が話されたことの意味を聞いても答えられなかったのだ。

大先生のお話は分からなかったので、あまり真剣に聞いていなかったはずなのに、大先生のお話が耳に残っているのである。特に、『合気神髄』や『武産合気』には、大先生から直接お聞きしたお話が載っているので、その文章のところで大先生の声とシンクロするのである。

例えば、その内のひとつで、『合気神髄』(P.66)の「空の気を解脱して真空の気に結ぶ」がある。これを読んで、かって大先生の話されたお言葉とシンクロしたわけであるが、ようやくこの意味が、自分なりに解釈することができたようだ。大先生のお話をお聞きしてからこれまで、潜在的にこの意味を知ろう、そして技でどう現わせばいいのか等を考えていたのである。50数年考え続けていたわけである。これは驚きであるが、更なる驚きは、大先生の教えである。その時は難解で分からなくても、いずれ修業をすれば分かるようになるはずだと導いて下さっていたことである。

さて、「空の気を解脱して真空の気に結ぶ」である。
最近、特に、呼吸法に力を入れて稽古をしているが、この呼吸法でこの意味と感覚が掴めたようだ。
片手取り呼吸法で説明する。

この片手取り呼吸法の体づかいと息づかいで、この「空の気を解脱して真空の気に結ぶ」が理解できると思う次第である。

諸手取呼吸法でも坐技呼吸法でも同じようにできるが、これを他の技でも出来るようにしていけばいい。

次にどの大先生の教えが解明できるか、技で現わすことができるようになるか楽しみである。

参考文献  『合気神髄』「空の気を解脱して真空の気に結ぶ」(P.66)