【第671回】 阿吽の呼吸と摩擦連行

合気道は技を練って精進している。何とかいい技を出して、相手に倒れて貰おうと、毎度、奮闘している。
合気道の技は宇宙の法則に則っているので、その法則を見つけ、身につけ、それをつかって技を掛けるのである。宇宙の法則は無限にあるだろうから、技も無限という事になる。
しかし、宇宙の法則は無限にあることがわかっても、それを身につけていくのは容易ではない。陰陽十字ぐらいまでは何とか見つけることができるが、その先の法則をどのようにすれば見つけることができるかは難しい。

更に法則を身につけていくためにも、法則があるのではないかと思う。
その一つが合気の真髄を把握する事であるようだ。そしてこの合気の真髄を把握するためには、摩擦連行作用を生じさす事であり、その摩擦連行作用を生じさすためには、合気妙用を導く事であるということである。
これを大先生は、「こうして合気妙用の導きに達すると、御造化の御徳を得、呼吸が右に螺旋しつつ舞い昇り、左に螺旋して舞い降り、水火の結びを生ずる、摩擦連行作用を生ずる。水火の結びは、宇宙万有一切の様相根元をなすものであって、無量無辺である。この摩擦連行作用を生じさすことができてこそ、合気の真髄を把握することができるのである。」(合気神髄p87)と言われているのである。
更にまた、合気妙用を導くのは呼吸であり、呼吸を導くのは気の妙用であるといわれている。(詳しくは『合気神髄 「気の妙用」 P.85-87』を参照)

さて、それでは、どのようにすれば摩擦連行作用を生じさすことが出来るかを説明したいと思う。
片手取り呼吸法で説明する。

  1. 息を一寸吐きながら手を相手に取らせて相手と結ぶ(一体化する)。
  2. 阿吽の呼吸のアーで、息が左回転しながら地に落ちていき、同時に息が右回転しながら胸に、そして腕、手先に流れる。
    つまり、腹のところで「呼吸が右に螺旋しつつ舞い昇り、左に螺旋して舞い降り、水火の結びを生ずる、摩擦連行作用を生ずる」のである。
    阿吽の呼吸によって、舞昇る息と舞い降りる息の対照力の水火の結びが生じ、摩擦連行作用を生ずるのである。
この結果、手を掴んでいる相手は、舞昇る息と共に浮き上がってくるのである。更に、この火と水の対照力によって天の浮橋が現れ、魄を下に魂(心)が上になる状態になり、相手を魂(心)で自由に導くことができるようになる。諸手取呼吸法や二人掛け・三人掛け諸手取呼吸法は、阿吽の呼吸でこの摩擦連行作用を生じさせてやらなければならないと思う。

摩擦連行作用を生じさせるためには、阿吽の呼吸でやらなければならないと考える。
阿吽の呼吸と云うのは摩訶不思議な呼吸である。摩擦連行作用を生じさせるだけでなく、陰陽・水火と対照力を持ち、そして天と地と結ぶ呼吸だからである。
阿吽の呼吸のアーは、只、息を出すのではなく、息を引きながら出すのである。出力だけでなく求心力を備えた息なのである。
今後、宇宙との一体化に向かって進まなければならないわけだが、阿吽の呼吸が大いに手助けしてくれるものと思う。