【第415回】 ロボットと人間

ロボットは人間にできない仕事、人間には難しい仕事、人間より優れた仕事をするために開発され、使用されているようである。今やチェスや囲碁などで人間を負かすほどの知能をそなえるようになったし、力ではもちろん、どんなに力の強い人間よりも強力な力、正確な目、繊細な感覚などを持つようになった。また、人間と同じように、二足歩行をすることもできるし、会話もできる。

今後もロボットはどんどん進化するのだから、ロボットと人間の差もなくなるのではないか、という人もいる。確かに手塚治の鉄腕アトムのようなロボットが近いうちにできれば、違いはなくなるということもあるだろう。科学者はロボットを極限まで人間化すべく研究開発を続けるだろうから、そう遠くない時期に、人間と区別ができないようなロボットが出現することもあるかもしれない。

しかしながら、合気道の目でロボットを考えると、ロボットは決して人間のようにはなれない、異質なものでしかない。なぜなら、ロボットは人工的であって、宇宙がつくったものではないからである。

合気道の教えでは、人間は宇宙がつくったもので、宇宙の意志が凝縮した引力の塊であるという。手足が二本づつ、手足の指が五本づつあるなど、体の摩訶不思議はそうとしか考えられない。

ロボットの体も人間と同じような構成と働きを持たせることは、ある程度のところまではできるだろう。だが、やはり限界はあるし、人間とまったく同じにはならないだろう。ロボットの表面に傷がついて、赤い血が流れるなどは想像すらできないことである。

人間がやる合気道では、「合気道とは、いいかえれば、万有万神の条理を明示するところの神示であらねばならないのである。過去―現在―未来は宇宙生命の変化の道筋で、すべて自己の体内にある。これらをすみ清めつつ顕幽神三界と和合して守り、行っていくものが合気道であります。」といわれている。

従って、つかう技は宇宙の条理に則った、神があらわれるものでなければならないし、体内にある過去―現在―未来の宇宙生命がなければならない。そして、顕幽神三界と和合し、建てかえ、立て直しをしていかなければならないのである。

ロボットが、一元の大神様の宇宙楽園建設の意志、そのための万有万物への分身分業による生成化育の導きを、理解し、実行するのは難しいであろう。また、ロボットが人間のように過去―現在―未来、そして顕幽神三界に生きることも不可能であろう。これは、一元の元につながる、宇宙が創造したものにしかできないはずである。

人間のやる合気道では、空を行じることが根幹である。つまり、自我の想念をなくすことである。これは、世の中から争いをなくし、よい仕事をするためには必要なことである。人は合気道や宗教によってそれを行うことができるが、ロボットには難しいことであろう。

現在は物質科学が先行していて、精神科学がついていけないので、争いが起こったり、問題が多発するわけである。だから、人は物質科学と精神科学を調和しなければならない。鉄腕アトムはその点、調和の取れたロボットだったようだが、ロボットが体(物質科学)と霊(精神科学)を調和させるのは、人間とは違い難しいことである。

従って、ロボットと人間は根本的に違うということになる。合気道の稽古も、ロボットとしてではなく、人間として稽古しなければならない。力を自慢するなどはロボットに任せて、ロボットができない、人間にしかできない稽古をしていくべきであると考える。

それが、開祖がいわれている「愛」であろう。