【第118回】 折れない腕

合気道で技を掛けるときに、上手くいかない理由のひとつに、腕が折れてしまうことがある。腕が折れるといっても、勿論、ポキッと折れるのではなく、腕が折れ曲がることである。折れ曲がってしまうと、そこで体幹の力が切れてしまうため、相手に力が伝わらず、技も効かないことになってしまう。

技が効くような腕にするには、折れ曲がらないような腕をつくることと、その折れ曲がらない腕で、効率的な腕遣いをすることである。

腕(医学的には「上肢」という)は、肩、肘、手首からなるが、「この前面(手のひら側)にある筋を『上肢の屈筋』と言い、基本的には上肢の関節の屈曲に働く。」(「人体解剖ビジュアル」 医学芸術社)

従って、腕の前面に力を込めると、腕が折れ曲がることになる。つまり、腕が折れ曲がるのは、腕の前面に力を入れていることになる。

「腕(上肢)の後面(手背側)に位置する筋を『上肢の伸筋』と言い、主に上肢の関節の伸展に働く。中でも、上腕三頭筋は上腕におけるほぼ唯一の伸筋であり、肘関節の伸展に働くとともに、同時に三角筋(後部)とともに肩関節の伸展にも作用する。」(「人体解剖ビジュアル」 医学芸術社)

従って、折れない腕にするためには、腕の後面の筋肉を使わなければならないことになる。上肢の伸筋には上腕の上腕三頭筋の他,前腕の総指伸筋、小指伸筋、短母指伸筋などある。

腕の後面(手背側)の筋肉を使うと、この部分が強靭な筋肉の板になり、腕に芯が入った感じになる。反対側の前面には力が入っていないので、腕の前面半分は柔らかい。つまり、腕は鉄板とゴムが重なった剛柔の板のようになる。

腕を有効に使うためには、腕の伸展に関わる三角筋、広背筋、菱形筋などを使わなければならない。そのためには、肩を貫く稽古をしなければならない。

腕(上肢)の後面(手背側)の伸筋を鍛えるには、合気道のすべての技の形稽古で、腕(肩、肘、手など)の後面を遣って技を掛けるようにすればいい。手首をもたれたら、手の甲側に気持ちと力を集中して稽古する。とりわけ諸手取りや座技呼吸法等で、これを意識して稽古するのがいい。

参考文献  「人体解剖ビジュアル」 医学芸術社