【第943回】 高齢者病のための合気道の知恵
高齢になると体が動かなくなるし、体調が狂ってくる。若い時には想像ができない事である。若い頃は周りの高齢者のそのような状態を見ているわけだが、自分がそうなるなど思ってもいなかった。しかし、高齢になると自分が体験するようになるし、周りの高齢者も多少の差はあるが、ほぼ全員が高齢者病に掛かっている。高齢者病とは正確な表現ではないが、他の言葉が見つからないのでつかう。ここでの高齢者病とは、高齢になると持つようになる体の不調である。
人は高齢になると大なり小なり高齢者病に陥る。元気な高齢者でも運動したり、サプリメントを使用して元気になろうとするが、あまり上手くいっていないように思う。医者に行っても完全には治らない。
私自身も高齢になって高齢者病になった。私の場合は合気道を続けていたお陰で己の高齢者病を克服したとは言えないが、改善した。
そこで考えたのは、自分の高齢者病の経験と合気道を基に、周りの高齢者が持つことになる高齢者病を合気道の知恵で直せるのではないかということである。大先生は、合気道は健康法であるともいわれているが、この高齢者病に対する健康法でもあるはずであると考えるのである。
そこで高齢者病とそれを直す合気道の知恵を整理し、記してみたいと思う。
- 目まい:
朝起き上がったときとか、横たわっているところから立ち上がったとき頭がくらくらしたり、目まいをするようになる。
<対処法>息と気持ちで天と地を螺旋で結ぶ。息と気(気持ち)を右回りの螺旋で天と結び、そして左回りの螺旋で地に下す。すると地に下がった息と気が腹に上がり目まいは消える。毎朝これで救われている。合気道の摩擦連行作用である。
- 歩行が遅く、不安定でふらつく:
<対処法>足腰の筋肉が細くなり、働きが悪くなるのが根本的な原因だから、筋肉をつけるように運動すればいい。これは別に合気道でなくともいいので省略する。ここでの合気道の知恵は縦に歩くことである。体を上下の縦にして歩くのである。年を取ってくると、体と足を地と水平(横)に動かして歩く事になる。若い内は上下の縦でも歩いている。
慣れるまでは、体を地に落とすように足をつかって歩くといい。縦で体をつかう事によってそれまでつかっている横と併せて|と━の十字となり、完全な形と機能となる。少しは元気で歩けるようにならはずである。
- 息が弱くなる:
<対処法>高齢になると息が浅くなるが、これは口呼吸をしているからであると考える。口呼吸をしているかぎり、年を取るに従って呼吸は浅くなるはずである。浅い呼吸では血の巡りも悪いので健康によくないから深い呼吸にしなければならない。深い呼吸をするようにするためには、腹呼吸、胸呼吸にすればいい。腹を膨らませ縮め、胸を膨らませ縮める息づかいである。この意味でも合気道の稽古はいいことになる。
- 猫背、前かがみ:
<対処法>猫背や前かがみになるのは、合気道的に云えば、体の裏側に気を集めているということになる。体の裏側は胸、腹側である。故に、体の表側に気(気持ち、意識)と体の力を流せばいい。胸を張り、肩を拡げるのである。
- 手や体が縮む:
<対処法>縮んでいて、伸ばしたい箇所をイクムスビの息に合わせて伸ばしたり拡げる。イーと縦に伸ばして、クーで横に拡げ、ムーで更に縦に伸ばすのである。手でも首でもどこでも伸ばす事ができる。伸びる、拡がるということは縦と横に動く事、十字に働く事であり、気が産まれて弾力が付くという事である。
目がかすんで見えにくい時、目をイクムスビの息でつかうと大分見えるようになるから、五感はこの息づかいで活性化できそうである。
合気道家がこのように合気道の知恵で己の高齢者病を直すだけでなく、合気道を知らない高齢者にもこれらの合気道の知恵による対処法を教えてあげればいいだろう。きっと感謝されるはずである。これは愛であり、合気道の目標でもある。合気道は世間にもお役に立つようにしたいものである。
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