前回は「魂は神である」を確認したし、『合気道上達の秘訣』の第916回では「神業のための環境づくり」を書いた。そこで今回は、合気道の技をつかうに際し、どのような神様が働いてくれるのかを調べてみることにする。勿論、我々凡庸な稽古人の技ではまだまだ神様は働いてくれないわけだから、それを実践、経験された方の話になる。それは言うまでもなく植芝盛平大先生である。その大先生のお話は『合気神髄』にある。偶然、今丁度読んでいるところにもそれが述べられているので、それを引用させて頂くことにする。
大先生は過って「合気の守護神は、天の村雲九鬼さむはら竜王で世界最高の徳であり、いかなる業をも、一瞬にして浄めてしまう神様である」とよく天の村雲九鬼さむはら竜王の名を出されておられた。そして「天の村雲九鬼さむはら竜王は汝は血縁結んでおるぞよ。」とも云われておられた。当時は何の事か全然わからなかったが、大先生の技は天の村雲九鬼さむはら竜王の働きの神業だったということが分かってくる。
それでは天の村雲九鬼さむはら竜王は、どのような神で、どのような働きをするのかをもう少し掘り下げてみることにすると、合気神髄には次のように記されている。
「くわしほこ ちたるの国の生魂(いくたま)や うけひに結ぶ 神のさむはら
その神のさむはらという神様、すなわち天の村雲の剣のことである。天の村雲ということは、いいかえれば宇宙の気、オノコロ島の気、森羅万象の阿吽の気を貫いて自分の魂の気によって、そっくりそれを結んで・・・。それが天の村雲の剣である。あらゆる昔からの神剣発動の根本になっているのである。」
つまり、天の村雲九鬼さむはら竜王とは、大先生の守護神であり、合気の守護神であるから、我々合気道家は天の村雲九鬼さむはら竜王が働き、その神業が生まれるように修業をしなければならないということだろう。
次に大先生は天の村雲九鬼さむはら竜王に働いてもらうためにどのような修業をされていたのかというと、次のように記してある。
「私はいつも稽古しているが、まず立つ所に天盤、地盤のふみをもって霊系の祖と体系の祖を左の足に、ずっとそこの国まで突き戻して、常立の姿に宇宙一杯に気の姿を拡げているのである。」。この形を大先生は何回か見せて下さったのでこの形を稽古していきたいと思っている。
しかし、大先生は「私の合気道は、八百万の神がことごとく協力して和合していくみちなのですと言われておられるので、天の村雲九鬼さむはら竜王だけが魂の技、神業を産むのではないはずである。それを次回は研究してみたいと思う。