【第905回】 天地と仲よくする

年を取ってくると体も意欲も衰えて来る。足腰が弱り、一度弱ると急速に悪化が進み、稽古も出来なくなるし、日常生活もままならなくなる。
若い頃なら、足腰が弱っても、走ったり体を鍛える事によってもとにもどった。しかし、高齢者になると、体が弱って若い頃のようなやり方で回復しようとしても元にはもどらないのである。また、若い頃のように合気道の稽古をしていれば足腰が弱らないということもなくなってくるのである。それは周りの高齢者を見ても分かるだろうが、自分自身での経験によるものである。
高齢者には健康な体を維持するため、若いころとは異なるやり方があるはずである。

結論から言えば、高齢者の体の衰えを回復、またはその衰えの速度を遅くするためには、また、健康な体を保持するためには自分の力だけでなく自分以外の力をつかわせて貰う事であるということである。
この考えは合気道の精進法からくる。合気道の技は己の力だけでなく、それを土台にしてその上に天地宇宙の力をのせてつかわなければならないからである。合気道の技づかいも初めは自身の力に頼るわけだが、これは魄の稽古と云いやがて限界がくる。これは若い頃の稽古であり、高齢者の稽古ではない。これを魂の稽古に変えなければならない。要は天地宇宙の力の気や魂の力をお借りするのである。

合気道で他の力、宇宙天地の力をお借りするわけだから、日常生活でもその力をお借りすればいい。合気道でお借りしている天地の「気」や「息」をつかわしてもらうのである。天の気とは日月の気であるから、お日さんやお月さんの気を頂いたり、自然からの気、例えば樹木、草花、また、鳥獣虫魚などからの気から頂くのである。
また、天地の呼吸を頂くことも大事である。難しい事ではない。何故ならば、天地の呼吸と人間の呼吸は同じであり、シンクロしているからである。人間は息を吐いて吸うを留まることなく繰り返している。地上の人間は例外なくこの呼吸をしているし、人間以外の動物も呼吸している。天地宇宙の呼吸に合わせていると云えるだろう。宇宙の意志、愛である。因みに地での典型的な呼吸は潮の満干である。

この気と息で健康を保ち、また、体の回復をすることになるが、気と息づかいをどのように身につければいいのかということになる。
私の場合、基本になるのは禊である。毎朝の禊で天地宇宙から気を頂き、宇宙天地の息づかいを身につけるのである。そのために大事な事は、天のお日様と仲よくなる事である。仲良くなって一体化するようにするのである。いずれは宇宙と仲良くなって一体化したいと思っている。
また、一体化しようと思っている宇宙の小宇宙である己の体とも仲良くならなければならない。毎朝、体を動かす際は動いてくれる体に感謝し、洗面の際は働いてくれるお礼をいい、今日もよろしくとお願いし目、鼻、耳、口を洗いすすぐ。これで仲良くなれるし、働いてくれる。
高齢者の健康法は宇宙天地と小宇宙である己自身と仲良くなることであると思う。