【第891回】 完全ではない状態で

70歳、80歳となると身体は完全ではなく、痛みを覚えたり、何かどこかおかしいと感じたりするのが普通であろう。若い時のように元気はつらつなどの状態はめったにないものである。腕が痛くて上がらないとか、足をつくと痛みを感じるとか、また、頭がふらつくなどである。
一般の高齢者ならあまり動かないようにしたり、体をつかわずに安静にするだろうが、合気道を長年稽古している身としてはそうはいかない。もし、痛いとかふら付くから稽古はやめだでは、高齢者は稽古が出来なくなってしまうことになるからである。

高齢者になったら、体調は完全ではない。何か、何処かがおかしいのは普通であると思い、その痛みや、不具合を受け入れて稽古を続けるべきだろう。故に、多少の我慢と覚悟が必要になる。
世の中には不治の病でも体を動かして一生懸命に生きている人がいるし、スポーツ選手でも骨折したり、靭帯を切断した状態でも試合にでているのである。ましてや武道の合気道においてをやである。

勿論、腕が痛くて上がらなかったり、体がふらついたり、腰が痛くて自在に動けない状態で稽古をするのは容易ではない。痛い個所はなるべくつかわないようにし、その代りになる箇所をつかわなければならない。それも相手にそれを悟られては駄目である。武道であるからである。特に、頭や体がふらつくのは注意しなければならない。これは自分に負けないようにする自分との戦いである。この戦いは相手など問題にならないくらいの厳しい戦いである。しかし、厳しい故に楽しいし、その楽しさは大きいのである。
何故、それが大きな楽しさになるのかというと、まず、痛みやふらつきを克服して稽古が出来たということである。さらに、厳しい稽古によって、その痛みやふらつきなどの原因と解決法が解決されるからである。お陰で、手や腕や肩周辺や腰などの痛みの経験をし、その原因がわかったし、その解決法も分かったのである。これはこれまでの論文に書いてきた通りである。

悪いところ、欠けたものを自覚し、それと戦いながら技の錬磨を続けて行くことが高齢者の稽古だと思っている。これからますます体は弱っていくだろうから、ますます不完全は体で稽古を続けていく事になるのだろう。