【第872回】 「ゼロポイントフィールド」と合気道

80年以上生き、50年以上合気道に励んで来て段々と自分の人生が分かり、合気道も分かったように思ったが、まだまだ分かっていないことを実感する。うわべだけの人生、もどきの合気道と、まだまだ表面的な部分が分かっただけで、その深く隠れている肝心な部分は十分には分かっていないということが分かったのである。
言ってみれば、これから本当の人生を歩み、真の合気道を修業しなければならないということになるわけである。謙虚になって人や自然など万有万物から教えてもらわなければならないのである。

そんな気持ちでいると、最近、新聞広告の欄で一冊の本に目が止まった。タイトルは『死は存在しない − 最先端量子科学が示す新たな仮説』に出合った。即、書店に行き購入し、2,3日で読み上げた。「死」というテーマを科学者の目で見て、科学したわけで、此の点に興味があったこと、そして科学者が「死」をどのように科学するかに興味があったのである。
しかし、この本が特に面白かったのは「ゼロポイントフィールド」である。合気道の研究に大いに関係があり役立つからである。これまで蓄積した合気道の知識や知恵と照合し、活用し、技づかいに役立つのではないかと思ったわけである。逆に言えば、合気道の上達、精進に役立たないとか関係ない物には興味が持てなくなってきたということである。尚、「死」もこれで説明しているが、これは別の機会にする。

同書で「ゼロポイントフィールド」を読んでいくと、これは合気道の教えに合致するし、これからの技の精進に役立つし、もしかすると合気道にとっても不可欠のものではないかと実感したのである。
「ゼロポイントフィールド」の実態や働きはまだ十分に分からない。これから技で試し、身につけていきたいと思う。

まずは、「ゼロポイントフィールド」についてまとめる。同書は、「ゼロポイントフィールドとは、量子力学でよく用いられる言葉ですが、量子力学では全くの無の状態=真空という状態は無いと考えられていて、物質とエネルギーが全く存在しない空間であっても原子内の水準で見ると活動していると捉えます。どれだけエネルギーを取り除いたとしても、考えうる最低のエネルギー状態で、原子内物質の運動が限りなくゼロに近い状態という時に「ゼロポイントエネルギー」と表現し、そのエネルギーの場を「ゼロポイントフィールド」と呼ぶのです。ゼロに近いエネルギーとは言え、全てのエネルギーの集合体とも言えるので、そのエネルギー量と言えば、莫大な量と言われていて、例え話しですが、物理学者であるリチャード・ファインマン氏は、「一立方メートルの空間に含まれるエネルギーが、世界のすべての海の水を沸騰させるに足る」と表現するほどです。」という。
また、「ゼロポイントフィールド」の「そんな莫大なエネルギーはどこにあるの??という事ですが、結論としては「今ここにすでに存在する」という事です。」という。

ここで「ゼロポイントフィールド」を合気道の教えと照合し、その関連を見てみると、

それでは、ゼロポイントフィールドのエネルギーを引き出すためには、どうすればいいのかということになるが、様々な方法があるという。例えば、祈り、瞑想、ヨガ、坐禅などあるというが、合気道も一つの方法だと確信する。
合気道の技づかい、息づかい、気づかいに依る錬磨によって引き出せると考える。具体的にどうするかはこれからであるが、大先生がそれを示して下さっているわけだから、可能性はあり、方法もあると思う。合気道は摩訶不思議でなければならないといわれるのは、この事にも関係あるだろう。
合気道は科学であるといわれるが、「ゼロポイントフィールド」の量子力学とも関係しているわけである。

尚、「ゼロ点エネルギー(zero point energy, ZPE)は一般的な科学用語で、量子力学の教科書にも登場するが、ゼロ点場(ゼロ・ポイント・フィールド、zero point field, ZPF)という言葉はあまり一般的ではない。」(ウィキペディア)。


参考資料  『死は存在しない − 最先端量子科学が示す新たな仮説』(田坂広志著 光文社新書)