【第817回】 本物の音楽

朝日新聞の「ひと」に、全日本合唱コンクール10連続金賞で特別賞の高校顧問大竹隆さん(写真下)の記事が掲載されていたのを、興味深く読んだ。

福島県立会津高校がこの10月、大分市で開催された全日本合唱コンクール全国大会で連続金賞を10回とったが、このうち8回でこの顧問の大竹さんが指揮したという。このような賞を一度取るのも大変だろうに、8度も連続して取るのには、何かがあるだろうと感じ、普段はあまり見ない記事を読んだのである。
やはりそこには賞を取れる理由があった。

大竹隆さんの口癖は「本物の音楽」だという。ということは、大竹隆さんの求める音楽は“本物“ということであり、本物を追求することを何よりも大事にしているということである。他校に勝つとか、他校より上手ければいいというのではなく、自分たちの出来得る最高の音楽にするということだろう。その結果が金賞受賞となったということである。
合気道の修業と同じである。だから、終わりがないと考えておられるはずである。

更に素晴らしいのは、「本物の音楽」の“本物“である。大竹隆さんは「本物とは魂の揺さぶりだと思う。歌う人も聴く人たちも。何だか涙が出るとか、救われるなあと思うような、そういうものが本物でしょうか」と云われているのである。
これを合気道に置き換えてみればいいだろう。合気道の技を掛けても、本物の技には、技を掛けられた相手は驚いたり、感心したり、納得するし、掛けた己自身も満足・感動するものである。これを大竹隆さんは魂が揺さぶられると言っておられ、合気道では“魂の比礼振り”というのだと思う。
魂の揺さぶりが生まれるような技をつかわなければならないと思った次第である。