【第813回】 備忘録と恩返し

この論文も今回で813回目となる。毎週一回ずつ書いているので、約16年間書いていることになる。
これまで、何故、この論文を書いているのか、書くようになったのかは紹介してきたはずである。簡単に言えば、大先生の教え、合気道の教えを後世、後輩達に残すことである。また、出来れば自分が研究した事も後進に残したいと思ったからである。

しかし、最近、この論文を書いている新たな意味が分かったので書いて置くことにする。そう、この“書いて置く”がその理由のキーワードである。
仕事を辞めて、独りで自由気ままに生きているが、合気道の研究はやっている。道場稽古の他に、家での禊ぎだけでなく、世の中を見、自然を見ても合気道に繋がるモノがないかどうか研究している。読みたい本が紹介されれば即購入し、面白そうなTV番組があれば見る。勿論、読みたくなる本も、面白そうなTV番組も、みんな合気道に関係している。

自分の身の回りには、多くの合気道のための教えがあることがわかってくる。それを書いているのが、この論文「高齢者のための合気道」であり、他の「合気道の思想と技」「合気道の体をつくる」「合気道上達の秘訣」である。
さて、これらの論文に書く新たな理由であるが二つある。
一つは、備忘録として書いているということである。年を取って来たせいもあるが、最近はモノを覚えておくことが難しくなってきているようなので、論文として記録しておくということである。
そして、もう一つ備忘録とする理由がある。それは、或る事に興味を持ち続けることができないということである。これは素晴らしい事だ、発見だ、教えだ等と思っていても、翌日には、その感動と興味が無くなってしまうので、これはと思った時に書いて置かなければならないのである。興味はどんどん移り変わっているのである。

二つ目の論文に書く新たな理由である。
もっと早く気がつくべきだったが、ようやくその理由が分かった。それは、合気道への“恩返し”と云う事になる。これまでお世話になった合気道にお返しをするということである。かっこよく言えば、合気道への愛ということになる。
合気道を半世紀以上続けているわけだが、合気道のお蔭で、自分が探していた人生観や価値観を見つける事が出来たと思うし、宇宙と自分も分かってきた。また、大先生や素晴らしい合気道の先生方や先輩にお会いできたし、武道界の傑物にも接することが出来た。更に、合気道をやっていたお陰で、ドイツ、フランス、イタリア、イギリスなどを中心に、ヨーロッパや世界を知ることも出来たのである。
合気道をやっていなければ、自分がどうなっていたかと冷や汗ものである。
合気道にはいくら感謝しても、し足りないのである。だから、少しでも合気道に恩返しをしたいのである。その一つが、この論文ということになるわけである。
ということで、この論文はまだまだ続くはずである。