【第808回】 眠り
数年ぶりで体調を崩し、稽古を休んだ。数年前にも同じようなことで稽古を休んだ経験をしているので、それほど心配はしなかったし、その内、直るだろうし、直らなければならないと思っていた。
朝、目覚めて起きるのが難しかったので、寝ることにした。いつもは6時に起きるのだが、この機会に寝たいだけ寝ることにし、結局、夕方の6時まで18時間ばかり寝床に入っていた。
寝ていると楽だし、病状も軽くなるようなので、眠りの大事さを再認識したわけだが、更に、眠りにはどのような働きや効用があるのかを考えてみた。これまで、眠りの必要性は分かっていたが、眠りについてあまり考えたことがなかったので、この機会に考えてみた次第である。
眠りについて次のようなことが分かった。一般的に云われている事、例えば、人は7,8時間の睡眠が必要であるとか、睡眠不足では十分な働きが出来ないし、肌が荒れる等‥ではなく、合気道の稽古との関係での眠りの効用である。
- 眠りは、肉体的及び精神的な疲れをとる:稽古をすれば疲れがたまるから、眠りでその疲れがとれるということである。これは一般的な事であるが、合気道でも大事な事なので取り上げた。
- 眠りは、心の整理・整頓をする:一日、見たり聞いたり、体験した事を、取捨選択し、いいものを取り上げ、心の整理・整頓をする。これが夢になるのだろう。夢は勿論、今日の事だけでなく、過去の事や未来の事も見せてくれるから、眠りも過去や未来とつながっているはずである。
- 眠りは、肉体と精神の修復をしてくれる:肉体と精神のバランスを取ろうとする。多少の不具合や偏りがあっても、ひと眠りすると良くなって、正常に戻っているのはこの働きであると考える。
- 眠りで、宇宙との交流をしている:今回の病で床に就いていたわけだが、眠っていると、気持ちがいいし、元気になってくるのを自覚する。
これは合気道的に考えれば、宇宙からの気・魂と云えるだろう。合気道の技をつかう際は、宇宙の営み、布斗麻邇御霊の気の運化に合するわけだから、眠りの状態でも、その気が働いているはずである。ましてや、眠りの状態は無意識であるので、気が目覚めて意識しているときよりも働きやすいはずである。
この宇宙の気(天の気)との交流が切れれば、人は生きていけない。これは、私の経験上間違いない。私はこの宇宙の気との交流が一瞬途絶え、昏倒して無意識状態になり、あちらの世界に行くところだったが、幸い、再び交流することになり意識が戻ったのである。起きていようが、眠っていようが、宇宙との気の流れが止まったら、死ということになるのである。
眠りは、ものの霊の世界の幽界である。夢にあるように、自分の意志で筋を変えたり、勝負に勝ったりすることは出来ない。日常の目覚めている世界は顕界であり、物の世界である。自分の意志で自由にできる世界である。
この眠りの幽界と目覚めている顕界の間にある、半分意識でき、半分意識できない世界がある。それは眠りから覚めはじめて完全に目が覚めるまでの間である。この時間が大事であるようなのである。意識してだけでは出て来ない事が出てきたり、忘れていた事を思い出したり、これまで解らなかった事が分かったりするのである。多くの発明や発見はこの状態の中で生まれたはずだと実感する。
そんな事で、朝のこのボーッとする時間を大事にしようと思っている。なんせ高齢者になれば、時間はたっぷりあるのだから。
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