【第713回】 自己を知る

合気道修業の目標は宇宙との一体化である。宇宙との一体化とは、宇宙の条理を知り、宇宙の意志を知り、自己の使命に与えられたる宇宙の使命を知ることだと考える。そのために我々は合気道を修業しているわけである。

大先生は、「合気道を体得したならば、宇宙の条理が分かり、また、自己を知り、分ってくる」(合気神髄 P.109)と言われている。つまり、宇宙がわかってくると同時に、自己を知るようになると言われているわけである。逆に言えば、自己を知らなければ宇宙も分からないし、合気道も分からないという事になるわけである。自己を知る事が大事なのである。

大先生は現代人が自己を知らない事を次の様に嘆いておられる。「今の世は、大いなる迷信に陥って、自分を忘れている。嘆かわしいことです。人々はすべからく合気の道に修業すべきです。そうすれば、忘れていた自己を知ることが出来ます。(武産合気P.93)」 合気道を修業して宇宙を知り、そして自己を知ればいいと言われているのである。
また、合気道をやれば自己をつくり、自己を完成することができると、「武道(合気道)とは自己を作る、自己を完成させるところのものである。」とも言われているのである。

それでは“自己を知る”とはどういうことなのかを考えてみたいと思う。自分の馬鹿さ加減を知ることもあるが、やはり宇宙との関係で考えるべきだろう。
一つは、自分は何者なのか;何処から来て何処へ行くのか;自分の宇宙との関係=万有万物との関係;宇宙から与えられた使命等を知る事等だと考える。そしてこれを知るためには、それらを発見し、分析し、そして実践・実証しなければならない。合気道の技の稽古と同じである。

次に、己自身の心体を知ることである。先ずは、人の心体は宇宙と同じであることを確信する事である。大先生は、「人というものは、造化器官であることを知り、全大宇宙と己とは同じということを知らなくてはいけない」と言われているのである。宇宙の一霊四魂三元八力、陰陽十字の働きが人にもあるし、いい技を生むにはその営みと同じようにつかわなければならないことになるわけである。更に、耳鼻目や心臓肺胃腸などの造化機関などの事、例えば、それらの配置や形の意味等々、いろいろと分かってくる事である。

合気道の稽古、つまり宇宙の営みを形にした技の稽古をすることによって、この二つの面での自己を知るようになるのである。
大先生は、「合気道を体得したならば、宇宙の条理が分かり、また、自己を知り、分ってくる。例えば、剣一本動かすにも自己が全部入り、宇宙と同化している。」と言われているから、剣一本動かすにも自己が全部入り、宇宙と同化するように修業しなければならないことになる。つまり、そこまで行かなければ、宇宙も自己も分からないということでもある。まだまだ修行である。