【第701回】 元気に見せる

合気道は武道であるから、敵に侮られない、弱みを見せないのが基本である。多少体の調子が悪くとも、他人や稽古の相手に気づかせないように、元気に見せるのである。場合によっては、弱みや元気を見せない事で最悪、襲ってくるかも知れないから、危険を避けるためにも元気に見せなければならない。
また、病気だとか、体や頭がだるいとか、元気に見せなければ、周りや稽古相手は心配したり、気をつかったりと迷惑を掛ける事にもなる。人に気をつかわせたり、心配を掛けないためにも元気に見せなければならない。

人はいつも元気でいられるわけではないが、元気に見せるのである。
元気でいられるように注意しなければならない。取り分け、年を取ってくると調子が悪いことが多くなる。元気に見せられるようにも注意して稽古をし、日常生活や衣食住にも注意を払わなければならないことになる。

元気を見せるとは、気持ち、体、動き・動作の元気を見せることと考える。
まず、体である。年を取ってくると、体に元気が無くなってくるから、それを何かでカバーしなければならないことになる。気持ちや気力でカバーすればいいだろう。気持ちや気力は年に関係ないようだし、年を取っても鍛えることが出来るようだから、いつまでも元気に見せることはできるだろう。

次に、動く・動作も普通に生きていれば、体と同じように元気が無くなってくる。しかし、年を取っても動きや動作に元気が満ち溢れている方々は多い。例えば、合気道開祖の大先生をはじめ、能役者、歌舞伎俳優、お茶人などなどである。
年を取っても動く・動作を元気に見せるためには、理合いの動き・動作、自然で無駄のない動き・動作にしていけばいい。理合いの動き・動作を合気道の教えから言えば、宇宙の営みと法則に則るということであり、無駄がなく、自然であるという事である。
この宇宙の営み・法則が身に着けば付くほど、動きや動作は元気に見えることになるはずである。故に、年を取ればとるほど、宇宙の法則を身につけることが出来るようになるはずなので、年を取っても自然で元気に見えることになるのである。

年を幾ら取っても、体を鍛え続けながら、体の衰えを気持ちと動き・動作でカバーしていけば、稽古でも日常生活でも元気に見せることができると考える。