【第688回】 高齢者とDNAスイッチ

先日、NHKのテレビ番組「シリーズ 人体?遺伝子『“DNAスイッチ”が運命を変える』を見た。そこでは「今、遺伝子の研究で最もホットな分野の一つが"DNAのスイッチ"です。なんとDNAにはまるで「スイッチ」のような仕組みがあり、その切り替えによって遺伝子の働きががらりと変化。さまざまな体質や能力、病気のなりやすさなどが変わり、私たちの運命や人生までも左右するというのです。こうしたスイッチの切り替えは、およそ2万個ある全ての遺伝子で起きる可能性があります。その結果、体質や能力、病気のなりやすさなどが変化し、私たちの運命が大きく変わっていくのです。」と語られていた。
そして、「どうすればDNAのスイッチが切り替わるのでしょうか?」という問いに対して紹介されたのは、「その詳しいメカニズムはまだ研究途上ですが、食事や運動などによって「DNAメチル化酵素」の量などが変化し、スイッチが切り替わることが分かってきています。特に影響が大きいと考えられているのが、生活習慣によるスイッチの変化です。」ということであった。

この「どうすればDNAのスイッチが切り替わるのでしょうか?」の中で、食事によってDNAスイッチが切り替わる具体例として、「メスの働き蜂と女王蜂はまったく同じ遺伝子をもつものの、幼虫の頃にローヤルゼリーを食べて育ったハチだけが女王蜂になるそうです」とローヤルゼリーが女王蜂に切り替わるDNAスイッチということであった。
ということは、恐らく2万個ある遺伝子が変わるためのDNAスイッチをONにするものが何かあるはずだと考える。勿論、その多くは運動と食事にあるはずである。

合気道の開祖植芝盛平大先生は、大の男を放り投げたり、鉄砲の弾を避けたり、未来を予見したり、見えないモノを観たり、神界幽界にも出入りされていた等々、常人にはない能力を持ち、活躍されていたのは周知の事実である。これは大先生の超人的な厳しい修業によって、常人には中々難しい個所のDNAスイッチの多くがONになったものと考える。
大先生は、合気道は体にいいとよく言われておられた。当時は、合気道の稽古で汗をかくし、筋肉や関節が柔軟になり、また、食欲は増し、熟睡も出来るなどで体にいいのだと思っていたが、DNAスイッチの話を聞くと、合気道はDNAスイッチをONにし、脳の働きを良くしたり、常人が見たり、体験できない次元の世界に入ることができるようになったり、常人が見えないモノが見えるようになったりする等と、“真の人“になるということでないかと考えるようになったのである。

大先生は、多くのDNAスイッチをONにされ、超人的な働きをされた。多くの著名人(政治家、芸術家、学者、武道家、宗教家、思想家等々)がその大先生の許に集まって来られたわけであるが、その集まって来られた訳は、大先生に、どのようにすればDNAスイッチをONにすることが出来るのか、を学びたかったからではないかと考える。
そして大先生は、合気道を修業することによってDNAスイッチをONにできる、そしてそのONにする方法を演武や神楽舞、また道話で示して下さっていたと考える。

主に食事と運動によってDNAスイッチをONにし、自分の能力や遺伝子を変える事ができるとあるが、これは若い時期に有効だと思う。若い時ならば、食事により、そして運動によってDNAスイッチをONにできるだろうが、高齢者になると、食欲は無くなるし、激しい運動もできなくなるから難しいと考えるからである。
しかし合気道なら、高齢になってもそれは可能であるし、合気道こそが高齢になってもDNAスイッチをONにできるモノではないかと考える。いや、合気道では年を取れば取るほどDNAスイッチがONにしやすくなるのではないかと考える。

自分の例で恐縮だが、最近、合気道の技がちょっと変わったが、それと前後して頭が軽くなったのである。気がつくとこれまでのしかめっ面がなくなり、顔が明るくなり、口元がほほ笑むようになり、世の中や周りの人や万物がすべて同朋に見えるようになったのである。これは間違いなく、どこかのDNAスイッチがONになったと実感する。最近、特に、呼吸法と正面打ち一教を稽古していたので、これがDNAスイッチをONにしたのかも知れないと思っている。
何時の日か、合気道のある技を身につければ、あるDNAスイッチがONになり、ある能力が開発されるという方程式を見つけることができるようになるのではないかと思っている。