【第633回】 根本的な問題 その2.運動不足

街を歩いていて気になるのが、まともに歩けていない若者が結構目につくことである。足首がねじれて歩を進めたり、体を傾けて、びっこを引くように歩いたりしているのである。彼らの10年先が心配になる。
これは悪い姿勢で座ったり、オフィスでの仕事の姿勢が悪いせいのように思えるが、最大の原因は運動不足であり、とりわけ、運動の基本である歩くことが不足していると見ている。

まともに歩けない高齢者も見かける。股関節をつかわずに足先だけでチョコチョコ歩いているのである。股関節が固まってしまっているのである。
若者も股関節が固まってくれば、高齢になれば同じように歩けなくなってしまうだろう。

昼間にテレビをつけると宣伝づくしである。とりわけ、装身具や家電の宣伝販売、そして健康器具や健康サプリメントの宣伝が目につく。
気になるのは、後者の健康器具や健康サプリメントである。何故、気になるかというと、それらは健康に逆向していると思うからである。例えば、筋肉をつくったり、ぜい肉を落とすという磁気バンド、飲めば足腰の痛みが取れるサプリメントとかである。恐らく、科学的な調査やデータに基づいて、それらは健康にいいということだろうが、根本的な健康促進どころか逆効果と思うからである。何故かを次に説明する。

これまで人類は少しでも楽をしようと努力してきた。楽をするということは、己以外の力をつかうことで、己をつかわないことであろう。それが科学の目的である。遠くまで歩かなくてもいいように飛行機や車が開発された。人が重い物を苦労して持ち上げたり、運ばなくてもいいようにクレーンなどの重機が開発された。人類は飽きることなく、楽をするために努めており、実際に楽な社会になっているし、更なる楽を目指して突き進んでいる。これは科学や専門家の仕事であるから、今後も継続するし、誰も止めることはできない。

現代は忙しいし、ますます忙しくなる。また、人はますます少しでも楽しようとするだろう。しかし、それが本当に体や心を楽にしてくれるのかどうかが分からなくなってくるようだ。つまり、考える余裕もなくなってしまうのである。考える余裕がないとは、己の体に聞いている暇もないということである。従って、テレビやモスマートフォーンなどの情報に頼ることになるわけである。あのテレビに出ていたからとか、あの女優がつかっていたからとかが選択の基準になるわけである。

楽をするということは、自分の大事なモノを守るために、自分で出来ない事をやって貰うことだろう。楽することによって、その大事なモノを失ったり、傷つければ、本末転倒である。例えば、ベッドに寝ていて、食事も掃除も、また、買い物が、ボタン一つでできたりするのが、健康人にとっては楽とはいわないだろう。勿論、歩くことも出来ない非健康人には楽である。

どんなに科学が発達して、楽なモノができても、人はある程度、体をつかわなければならないと考える。ある程度の運動、体をつかわないと、人の体も心も機能しないように思える。どんな健康食を食べたり、サプリメントを飲んでも、運動を十分にしていなければ効果はないだけでなく、恐らく害になるはずだ。
また、体を動かさないと、頭も働いてくれないものである。合気道をやっているとそれを実感する。
例えば、一日、一刻(2時間)は歩くといい。体が元気になり、自分の体だと実感できるはずである。散歩でもいいが、それがもっとはっきり実感できるのは山歩きである。はじめの30分はちょっとしんどいが、2時間後には、生きているという感じになるはずである。体の各部位がコミュニケーションを取り合って、悪い個所を修正し、体のバランスを取っているのである。勿論、体と心のコミュニケーションも取り合っていると感じる。

この感じになると、体も心も健全であり、仕事にも意欲が湧くし、食欲も旺盛になるし、睡眠も深くなる。仕事をしていない高齢者には特に大事である。
運動、体を動かすことが、体と心を健全にすると考える。楽のためには、ちょっと苦労も必要なのである。
また、楽する事だけを考えないで、楽の陰の部分も認識しなければならない。