【第676回】 最初のむすびが肝心

合気道の主たる稽古の目的は、“宇宙を取り入れていくこと”である。宇宙の営みと法則に則った技を身につけていくことによって宇宙に近づくのである。その為に、技と体は宇宙の法則に則ってつかわなければならないし、宇宙とも結ばれなければならない。しかし、すぐの宇宙との結びは容易ではないから、稽古相手との結びからはじめなければならないだろう。

技を掛けるに際して、先ずは稽古相手と結ばなければならない。相手を押したり引いたり、弾いたりして結ばなければ技が生まれない。1+1=1にならなければ、争いになり、腕力でやらざるを得なくなる。
しかし、これが難しい。初めが肝心で、初めが不味ければ後は上手く行かないのである。

後輩や後進に注意をするが、なかなか出来ないのである。あまり出来ないので、このやり方は間違っているのかとも思った事があるが、次の大先生の教えでこれが正しい事が確証された。
大先生は、「技は、すべて宇宙の法則に合していなければならない。宇宙と結ばれる武を武産の武というのである。武産の武の結びの第一歩はひびきである。五体のひびきの槍を阿吽の力によって、宇宙に拡げるのである。五体のひびきの形に表れるのが「産(むすび)」である。(合気真髄 P86,87)」と言われているのである。

合気道の技は宇宙の法則に則っているし、阿吽の呼吸でも天地と結んでいるわけだから宇宙と結ばれているので、わざわざ武産合気という必要はないと考えるから、ここでは武産合気を合気道とする。

だから、まず合気道は宇宙と結ばれる武であることは問題ないだろう。
次の武の結びの第一歩がひびきである。この第一歩のひびきで先述の相手と結び、相手とくっつき、相手と一体化するのである。このひびきは阿吽の呼吸の力によって産まれる槍となって宇宙と結ばれ、そして五体のひびきの形で表れるが、これを「産(むすび)」というのである。そしてこの「産」で表れたひびきで相手を結び、くっつき、一体化し、そして導くのである。

この「産(むすび)」は、「技の発兆の土台」であるとも大先生は言われており、これがなければ技にならないといわれているのである。また、このためには、「身心統一が肝要である」とも言われているのである。
最初のむすびが肝心なのである。