【第83回】 健康と合気道

健康のために合気道をやっている人は多い。よいことである。しかし、合気道をやっていれば健康で長生きできるという保証はない。合気道をやっている人には、長生きする人もいるが、意外と早死にする人も多い。

折角合気道をやるなら健康で長生きをしたいものである。長く生きるとは、長く稽古ができるということで、それだけ合気道に深く入っていけるということになる。早死にしたのでは入り口までしか入れない。開祖(写真)はよく「50、60歳は鼻ったれ小僧(で何も分からない)」と言われていた。合気道も70歳ぐらいからぼつぼつ分かってくるというであろう。

健康とはこころと頭と体が正常に機能することであり、それのバランスがとれていることである。頭や体が健康でもこころが汚れていては健康とはいえない。こころが健康になるためには我欲を無くしていくことであろう。勝ち負けとか損得とか金とか名誉などばかり考えていると、こころを乱すことになる。

頭と体の健康の大本は、血液の循環とカス取りであろう。つまりは、太い血管だけではなく、細い毛細血管まで血液を流すことである。毛細血管は体の表面の皮膚の下にあるので、皮膚をマッサージするのがいいといわれる。合気道では道衣を着て稽古をするので、受身を取ったり、動くと道衣で皮膚がすれて十分マッサージになるはずだ。毛細血管の血はよく流れるので健康にはよいはずだ。

また合気道は体のカスを取る禊ぎといわれるように、稽古をやれば体の節々のカスが取れるので、稽古をするのは健康にいいことになる。特に二教とか三教の関節技をやると関節のカスが取れていく実感が得られる。

血液が滞るところは筋肉であるといわれる。そこで筋肉から血液を絞りだす必要があるので、筋肉を伸ばしたり縮めたりする必要がある。合気道の稽古では筋肉を縮めたり伸ばしたりしなければならないので、血液の流れはよくなり、健康にはいいはずである。

継続は力なりといわれるように、健康法は一過性ではなく、一生やることが大切である。長く続かない健康法は正しいものではない。合気道には毛細血管に血を流したり、体の節々のカスをとったり、筋肉に溜まっている血を流したりと健康に大切な要素があるが、一生続けられるような稽古のやり方をしなければ健康法にはならない。そのためには若いときのようにパワーに頼るのではなく、また体の裏側を使って膝など痛めないよう体の表をつかい、肩を痛めないよう肩を貫くなど、いくら年を取ってもできるような、理にかなった稽古をするようにしなければならないだろう。