【第71回】 夏はゆっくり正確に

若いうちは、夏だろうが、冬だろうが、季節に関係なく、相手が誰だろうが関係なく稽古しなくてはならない。それが若さというものだろう。出来るだけ多くの経験をし、何事にも体当たりし、突破したり挫折したりして自分の限界を知り、そして限界を伸ばしていくのである。

高齢者は自分の能力と体力、さらにその限界も承知しているはずである。それまでいろいろなことに挑戦してきて、自分に出来ること、出来ないことは分かっているはずだ。今更、バタバタやって自分を試す必要もないだろう。

つまり、高齢者はそれまで培ってきた自分の能力と限界を少しずつ伸ばせばいいし、少しでも長く修行を続けられるようにすることが大事であろう。少しでも長く続けるためには、若い時のように無理をしないことである。無理をしないためには、自然の理に合った稽古を心掛けることだ。季節、体調、相手に合わせた稽古をするのである。

夏の暑いときは、通常よりゆっくり稽古するとよい。暑いのに息を切らせながらバタバタ稽古するのは、高齢者にはよくない。それよりも、ゆっくりとやり、その分、強く気を入れて、正確に動くようにすればよい。そうすれば、ゆっくりやっても使用するエネルギー量は同じはずである。

稽古で息があがる、疲れるとは、ハアハア、ゼエゼエ、ドキドキすることであり、よいことではない。呼吸と動きが合っていないから、息があがり、心臓がドキドキするのであって、そうならないようにゆっくりと呼吸と動きを一致させて動くようにしなければならない。

また、ゆっくり動いていくと、形や技の不備を見つけたり、力がこもっている状態や貫ける感覚もつかみやすい。下手な技の使い方をして、力がこもったり、肩などで力が貫けなければ、呼吸と動きが一致しないものなので、息を乱すことにもなるのである。