【第659回】 足首が弱くなると体が動かなくなる

誰でも年を取ると体(肉体)も体の機能も衰えてくる。衰えるのは自然であるから、何もしなければ、その自然の流れで衰えていくことになる。その流れを止めることはできない。これはこれまでの人類の歴史が証明している。人に出来る事は、せいぜいその衰えの流れを若干遅らせることだけである。だが、この若干のための試みと努力が大事であると考える。何故ならば、その努力で、健康な体で健康な生活ができるからである。

80才に近づくと、それまで思いもしなかった、体の機能の衰えを覚える。その一つにふらつきがある。立っている時、歩いている時、ズボンや靴下を履く時など、それまでなかったふらつきがあるようになる。
そこでこのふらつきについて考えてみた。
考えた事、<その1>は、ふらつきは自分だけでなく、他人にもあるのかどうかである。もし、自分一人で他の高齢者にふらつきがないとしたら、ふらついた自分は個人の病気ということになる。しかし、周りを見渡してみると、他の高齢者もそうだが、若い人でもふらついているようなので、これは個人の病気ではないという確信を得た。

<その2>は、何故ふらつくのか、ふらつくとはどういうことか等ということである。その答えは、足首の弱さにあると結論づけた。この答えを導いたのは、合気道の教えである。従って、合気道を修業していなければ、恐らく導けない結論だっただろう。勿論、ふらつく原因は他にもある。例えば、脳の問題である。アルコールによる脳の乱れや高齢による脳の萎縮等である。しかし、これらは医学の問題なので取り上げないことにする。

宇宙は十字で出来ており、そして十字で営んでいる。人は宇宙の申し子であり、宇宙と同じく出来ており、機能するように出来ているのである。人の体も十字に機能するようにできている。そして十字の縦がしっかりし、そして縦が先に動かなければ、十字の横は機能しないということである。(尚、くわしいことは、「合気道の体をつくる 第658回 槍と剣」に書いてある。)
つまり、縦の槍である足(下肢)と体幹と首・頭がしっかりしていなければ、横の剣は、うまくつかえないということである。
また、「合気道の体をつくる 第659回 足首を鍛える」で書いたように、縦の槍のうち、足首が特に大事なのである。足首か弱いと、縦の槍がしっかりした一軸として機能せず、横の剣が上手く動けないことになるわけである。
つまり、足首が弱くて、力が入らなければ、縦の槍(足)が地をしっかり踏むことはできず、横の手や体が動いてしまったり、動かしてしまう。これがふらつくということだと考えるのである。

<その3>は、高齢者のふらつきを無くす、または減らすためにどうすればいいのかということである。
合気道をやっている人は、前出しの2つの論文を見て、それを実践すればいいだろう。
そして合気道を稽古していない人は、まず、何といっても、歩くことである。歩きながら、足首を鍛えるのがいい。高齢者には時間はあるはずだから、毎日、一刻(2時間)歩くといい。人は歩くことが基本である。基本と云うのは、歩くことによって、体や頭が機能するように出来ているはずだということである。まだ、元気ならば、階段をつかうことである。エレベーターやエスカレーターなどはなるべく使わないようにして、己の体をつかうのである。

更に足首を鍛えたいならば、四股踏みもいいし、また山歩きもいい。足首の鍛練を一生懸命にやっていれば、体が何をどうやればいいか教えてくれるはずである。体のために努力しているのなら、体は喜んでくれ、そして喜んで支援してくれるはずだからである。

足首がしっかりしてくれば、ズボンも靴下も立ったまま履けるようになる。
足取りがしっかりし、姿勢もよくなり、若くなるだろう。
尚、前述の論文にも書いたが、足首がしっかりしていないと、歩を進める時、体重が足首ではなく、膝に落ちるので、膝を痛める原因になる。そしてその痛みは膝から腰に移動するはずである。足首を鍛えなければならない。