【第653回】 若くなりたかったら胸を張れ

若者と年寄りの外見の差の一つに「胸」がある。元気のいい若者、取り分けスポーツや運動をしている若者は胸が張っているが、高齢者の多くは、胸が張っておらず、胸が閉じているといえるだろう。胸が閉じていると、外見からも、物事を内向きに考え、ネガティブに考えるだろから、ますます年を取っていくのを助長することになるはずである。誰も望んでいないはずである。

若くなろうとしたら、アンチエイジングのサプリメントや美容もいいだろうが、自分の力で、自分の内からやった方がいい。誰でも、何時でも、何処でも、そして経済的である。
胸を張る、胸を開くように訓練するのである。訓練は時間を決めてやるのもいいだろうが、気がついた時、出来る時にやればいい。街や廊下を歩いている時、電車に乗って立っている時でも座っている時でもいい。因みに、胡坐をかいて坐ると猫背になりやすい。椅子に掛けるのもいいが、やはり正座で坐るのが胸を張るにはいいようだ。

胸を張るためには色々な方法があるだろう。両手を左右同時に開くとか、深呼吸でやるとか等々。武道や合気道をやっている人は、やはり呼吸をつかって胸を開いたり、閉じたりしなければならないだろう。詳しくは 「合気道の体をつくる 第654回 胸を鍛える」に書いた。
また、簡単にできることは、胸の真中に「目」がついていると思い、その目で前を見るようにすれば、自然と胸は張るはずである。
もう一つ、合気道家には船漕運動がいい。この運動ほど胸を開け、胸を柔軟にできるものはないように思う。しかし、息に合わせ、力一杯やらなければ胸は開かない。

胸を張れるようになってくると、外見だけでなく、振る舞いも若々しくなってくる。外見は外から見た姿、かたちであり、振る舞いは、動作、動きということになるが、合気道においては、技づかいや体づかいが若々しくなるという事である。

合気道の相対の形稽古で、閉じた胸では技も動きも小さいし、手先しか使えないので、大きな力は出ないし、呼吸力にならないので、相手と一体化して導くことは難しくなる。これが年寄り稽古になってしまうわけである。胸を開いて、胸鎖関節を支点とした長い手、手全部をつかうだけでなく、胸を目いっぱい使うことによって、天の息・気、地の息・気が胸中に溜まり、そしてその息・気がつかえるようにすることである。

胸を張ることによって、宇宙・天地の息・気(生命エネルギー)が入ることになるから、外見も振る舞い、動作、そして技と体づかいも若くなるものと考える。