【第524回】 作品として自分を完成していく

合気道の目標は、宇宙との一体化であり、宇宙楽園完成のための尽力と云われる。合気道を志すものは、これらの目標に向かって精進しなければならない。この合気の道を進むことによって、自分も完成に向かって進んでいくはずである。合気道家は自己完成の道も進んでいるのである。

自分を完成していくためには、自分の好きなことをやっていくことだろう。嫌いなことや押し付けられたことをやっても、自分の完成には役立たないはずである。

我々は合気道を修業しているわけだが、他の分野で修業している人も沢山いる。弓道や剣道、千日回峰、修験者等々である。

解剖学者の養老孟司さんは、修業を、「修業っていうのは、自分を完成させるための作業ですね」と言っている。そして、修業で自分を作品として完成していくのだという。

本当に好きなことに打ち込んでいけば、作品が完成に近づいていく。合気の道に打ち込まれた有川師範は、僭越ながら、これを「道楽」と云われたのだと思う。
この「道楽」や自分の作品を完成に近づけることこそが、宇宙から与えられた「使命」「天命」というのではないだろうか。

修業により、ともに、宇宙と小宇宙の完成に近づいていくわけである。
作品としての自分も完成していかなければならないということである。

文献 『老人の壁』(養老孟司 南伸坊 毎日新聞出版)