合気道の稽古は20代から始めたので、もう50年以上もやっていることになる。これまで、合気道からはいろいろなことを教わった。その内のひとつは、修業の道は一本の道をまっすぐ進むのではなく、ジグザクに、それも時としてそれまでとは対照的に進まなければならない、という教えである。
例えば、初めは力いっぱい技をつかうので、腕力や体力に頼った稽古をしなければならない。だが、次は、その力を土台にするのであるが、その力に頼らず、心と息を主体にした稽古をしなければならない、ということである。
このように、それまでとは対照的な稽古に変えないと、進歩上達がないのである。しかし、この切り替えが難しいようであり、多くの稽古人が苦労する。その上、この対照的な切り替えができなかったために、上達どころか己の体を壊してしまったりもするのである。
若い頃と対照的な稽古をするということは、高齢者として生きることにも必要であるように思う。若い頃と高齢者の対照的と思われる点を挙げてみると、次のようになる。無秩序であるが、思いつくままに記してみる。
若い頃 | 高齢 |
---|---|
太く短くと、短期決戦型 | 細く長く、できるだけ長くの、長期継続型志向 |
瞬間爆発 | 決めたことを毎日こつこつ継続 |
物事に一喜一憂 | 焦らず騒がず |
目先にとらわれる | 今よりも先が楽しみ |
健康増進 | 健康維持 |
体力増強 | 体力維持 |
体力(エネルギー)消耗 | 体力を最大限活用 |
腕力、体力に頼る | 息、心、気力を重視、自分以外からの力を求める |
自分を過信 | 宇宙に生かされていることを悟る |
相手に勝つ、負けないことが大事 | 自分に勝つことが大事 |
自分本位 | 他人の立場で考え、実行する=愛 |
死などは他人事であり無関心 | 死を意識する |
自分のために生きる | 他人のため、宇宙生成化育のため |
見えるモノを重視 | 見えないモノの重要性を知る |
いろいろなモノをもらう | それまでもらったお返しをする |