【第493回】  若い頃とは対照的

合気道の稽古は20代から始めたので、もう50年以上もやっていることになる。これまで、合気道からはいろいろなことを教わった。その内のひとつは、修業の道は一本の道をまっすぐ進むのではなく、ジグザクに、それも時としてそれまでとは対照的に進まなければならない、という教えである。

例えば、初めは力いっぱい技をつかうので、腕力や体力に頼った稽古をしなければならない。だが、次は、その力を土台にするのであるが、その力に頼らず、心と息を主体にした稽古をしなければならない、ということである。

このように、それまでとは対照的な稽古に変えないと、進歩上達がないのである。しかし、この切り替えが難しいようであり、多くの稽古人が苦労する。その上、この対照的な切り替えができなかったために、上達どころか己の体を壊してしまったりもするのである。

若い頃と対照的な稽古をするということは、高齢者として生きることにも必要であるように思う。若い頃と高齢者の対照的と思われる点を挙げてみると、次のようになる。無秩序であるが、思いつくままに記してみる。

若い頃高齢
太く短くと、短期決戦型細く長く、できるだけ長くの、長期継続型志向
瞬間爆発決めたことを毎日こつこつ継続
物事に一喜一憂焦らず騒がず
目先にとらわれる今よりも先が楽しみ
健康増進健康維持
体力増強体力維持
体力(エネルギー)消耗体力を最大限活用
腕力、体力に頼る息、心、気力を重視、自分以外からの力を求める
自分を過信宇宙に生かされていることを悟る
相手に勝つ、負けないことが大事自分に勝つことが大事
自分本位他人の立場で考え、実行する=愛
死などは他人事であり無関心死を意識する
自分のために生きる他人のため、宇宙生成化育のため
見えるモノを重視見えないモノの重要性を知る
いろいろなモノをもらうそれまでもらったお返しをする

若い頃との対照的な生き方は、合気道の稽古の世界でも同じであろう。若い頃は、若者としてやるべきこと、やりたいことをしっかりやり、年を取ったら、若い頃とは対照的に稽古をし、生きていくのがよいと考える。