【第46回】 弾力的稽古

年を取ってくると、あたりまえのことだが、体は硬くなってくる。その上、どうも頭も硬くなるようだ。昔から知っている高齢者と稽古をすると、長年稽古してきているので体や手足もしっかりしていると思って少し力をいれて技をきめようとすると、きめていない途中で痛がってしまう。筋肉が硬く、弾力性がなくなってきているのである。

そこで、高齢者の稽古を注意して見てみると、稽古年数があって経験豊富なため、自分より弱い相手を力で投げ飛ばしているようだが、自分では受けをしっかり取らず、筋肉も限界まで伸ばすようなことも少ないようだ。稽古といっても、弱いものを投げたり押さえたりすることが主流になってしまっているように見える。普段はこれでいいかもしれないが、たまに自分より老練なものに極められると、普段十分に鍛えていない筋肉の硬さが災いして、悲鳴をあげることになる。

初心の頃や弱い間は、古くから稽古をしている相手に十分筋肉や関節を鍛えられるおかげで、体や筋肉が柔らかくなるが、高齢者になり古株になると伸ばしてくれる相手も少なくなるので、だんだん固まってきてしまう。長年修行していれば、相手は技もかけにくくなり、受けも取るまいと思えば返すこともできる。しかし、そこで頑張るのは相手の稽古にもならないし、自分の稽古にもならないだけでなく、かえって害になる。つまり、体や筋肉が硬くなるわけである。筋肉や関節や体を弾力的にするには、まず若いうちに力いっぱいの稽古をして、強靭な筋肉、関節、体をつくることである。そして、どんな相手の受けでも柔らかく受けてやることである。受け身をとるときでも、力を抜いてそこに気をいれていくと弾力がでてくる。

実は、年をとればとるほど、受身で柔らかくすることが大事になる。高齢になれば筋肉をつけたり、関節を鍛えるよりも、伸ばして弾力的にする方が大事であろう。また、頭を弾力的にするのも大事である。