【第343回】 明確な目的を持つ
人は少しでも長く生きたいと願っている。これは遺伝子に組み込まれた、人類の本能であろう。お陰で、現在では100歳以上生きているのがそれほど珍しいことではなくなった。
人の寿命は120歳、125歳、130歳などと言われるが、将来は300年、500年も長生きできるようになるという学者もいるようだ。中には、自分の頭や体を液化窒素漬けにして、将来、生き帰ろうとしている“人”もいる。
開祖やキリストのような稀有な存在になると、自分が死ぬことになる年代なども分かっていたかもしれないが、おおかたの人には死ぬ年などわからないだろう。有難いことだと、つくづく思う。そんなことが前から分かっていたら、凡人は一生懸命生きようとしなかったり、努力しなくなるかもしれない。自分も今のようには、合気道の稽古などやってないかもしれない。
いつ死ぬか分からないから、少しでも長生きしたいと思って努力するのではないだろうか。そのため、多くの学者や関係者が、長寿のためにはどうすればよいか、研究し発表している。
ボストン大学ボストン医療センターのニューイングランド長寿研究所のトーマス・パールズ氏は、長寿のための膨大な調査をし、長寿の秘訣を次のように語っている。
- 長生きするにはリラックスした方がいい
- 過剰なストレスを受けてもくよくよ悩んだりしない
また、探検家で作家でもあるダン・ビュートナー氏は、長寿の秘訣を次のように言っている。
- 私たちの性格の大部分は遺伝子レベルで決まっているが、ライフスタイルを改善して寿命を延ばすことはできる
- 人生に明確な目的を持つことは、平気余命7年分の価値がある
まだまだいろいろな説があるだろうが、目についたこの二人の長寿の秘訣を合気道の稽古法に重ね合わせてみると、合気道による長寿の秘訣と、長寿の合気道、つまり合気道を長く続ける秘訣は、次のようになるのではないだろうか。
- 「長生きするにはリラックスした方がいい」から、合気道でもリラックスしなければならない。合気道でリラックスするとは、合気道をやっているからといって粋がらないで、淡々と楽しむことであろう。故有川定輝師範が言われていた「道楽」である。道を楽しむことである。
- 「過剰なストレスを受けても、くよくよ悩んだりしない」とは、相手を傷めてしまったり、技が効かないようなことがあっても、悩んだり、あまり拘らないことである。そのためには、そのことをプラスにすればよい。できなかった理由を考え、その問題を解決する努力をすればよいのである。いつかできるようになれば、その問題を提起してくれた相手とその問題に、感謝することになるはずである。
- 「私たちの性格の大部分は遺伝子レベルで決まっているが、ライフスタイルを改善して寿命を延ばすことはできる」わけだから、努力すれば寿命を延ばすこともできることになる。素質がない者でも技がつかえるようになるわけだし、合気道の目標に近づくことができるようになる、ということである。
- 「人生に明確な目的を持つことは平気余命7年分の価値がある」のだから、人生に目的を持つべきだろう。合気道でいえば、使命を持し、果たすということである。合気道でも、目的を持てば、長寿の合気道ができるはずである。目的を持ち、それに挑戦していくことで、合気道の修行を短期間で諦めず、やり続けることができるようになるだろう。稽古の目的を持つと持たないでは、量的な合気道寿命と質的な合気道の中味が、大きく違ってくることになる。
生きるためだけではなく、合気道においても、明確な目的を持たなければならないだろう。
参考文献 : ナショナルジオグラフィック ニュース
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