【第326回】 高齢者の稽古の仕方

人は、50,60歳を過ぎてくると、自分では元気で以前と変わりないと思っていても、実際は少しずつ変わってくる。その変わり方がよい方に変わる点もあるが、悪い方に変わる点が多いようだ。

合気道の修行面から考えると、体が衰えるということになる。まだ元気で若い者には負けないなどと思っていても、自分の以前の若い頃と比べれば明らかである。

体が衰えたなどと思う必要はないが、高齢になってくれば、体を以前より労わっていくことが大事だと思う。若い頃なら、準備体操もなしですぐ激しい稽古をしても、高齢になれば、やはり準備運動をするのがよいだろう。

準備運動で、体と心を柔軟にするのである。体の節々が柔軟になれば、怪我をしにくくなるだけでなく、技もつかいやすくなるはずである。

準備運動や柔軟運動は、息に合わせてやらなければならない。息を吸って伸ばし、それを吐き切って、さらに伸ばすのである。初めから吐いたのでは、筋肉は固まってしまう。

また、体の関節をすべて柔軟にしていくのがよい。指先から手首、肘、肩、肩甲骨、胸鎖関節、首、股関節、膝、足首、足指などである。

高齢者に大事なのは、できるだけ毎日やることである。若いうちはたまにでもよいが、年を取ってきたら、少しでもよいから毎日やらないと、筋肉が戻ってしまうし、感覚が鈍ってしまう。

稽古が終わった後の整理運動も、やった方がよい。年を取ってくると、疲れが溜まりやすくなるし、筋肉のほてりも取れにくくなり、寝苦しかったり、夜中や明け方に足がつったりする。整理運動で使った筋肉や関節を、息に合わせてゆっくりと伸ばしてクールダウンしてやるとよい。

高齢者の稽古でなによりも大事なのは、怪我をしないことである。若い時と違って、怪我すると治りが遅くなるので、十分注意をしなければならない。怪我によって再起不能になることさえあるのである。お互いに気をつけるべきであろう。

高齢になって稽古を続けるためには、いろいろな条件が揃っていなければならないが、最も重要なのが健康である。健康に稽古を続けるためには、食べ物と飲み物に気を配らなければならない。気を配るためには、食べ物と飲み物の知識を持たなければならない。食べ物や飲み物は薬のようなもので、その影響が体に現れる。合気道の技のように、陰陽もあるようである。

また、稽古の後で足がつったり、夜眠れないときなどには、スポーツドリンクを飲むと解消されるようだ。