【第314回】 使命

開祖は、人にはそれぞれ天から与えられた使命があり、その使命を果たすのが人の努めであるといわれた。そして、合気道で勝つということは、相手にではなく、己に与えられた使命を成し遂げることであるともいわれている。

だが、自分に使命があるのかどうか、また、何が自分の使命なのか、残念なことだし、開祖には申し訳ないが、まだ明確には分かっていない。おそらくほとんどの人はそうではないかと思う。

しかしながら、古希を過ぎ、東日本大震災などを経験すると、人はみんなつながり合って生きていることが分かってくる。震災で亡くなったり、被害を受けた方々が、いかに社会を構成していた要因としても活動されていたか、サプライチェーンの寸断とか、食料品の供給停止などでも分かる。ひとりひとりは、各々が一生懸命にやるべきことをやりながら、つながっているのである。

使命で、もうひとつ分かったことがある。使命ということはもっと身近で、簡単なことだということである。これも、開祖が教えて下さった。

つまり、自分の使命とは合気の使命と同じであり、自分の心を直すことであるというのである。開祖はこれを、「人をなおすことではない。自分の心を直すことである。これが合気なのである。又合気の使命であり、又自分自身の使命であらねばならない。」(「武産合気」)といわれているのである。

悟った人なら、これが自分の使命であると信じて、その使命を果たすべく生きるだろうが、凡人にはなかなか難しい。おそらくあちらへ行く際に、これが自分の天から与えられた使命だったのだろうと思うぐらいではないだろうか。

しかし、自分の心を直していくことなら、できないことはないかもしれない。そのためには、同じ使命をもつ合気の修行を続けなければならないことになる。修行を途中で投げ出せば、自分の使命を果たせないことになり、天の使命に背く罪となってしまうだろう。

天の罪人にならないよう、自分の使命を果たすべく、自分に負けないよう、自分の心を直すように、稽古を続けていきたいものである。