【第276回】 高齢者の身体を鍛える

高齢者の定義は相変わらず明確でないが、定年を迎える60歳乃至65歳以上としておこう。高齢者かどうかは、実年齢の他に精神的要因と肉体的な要因もあるだろう。精神的な面、肉体的面も高齢化するわけである。

しかし、60,70歳でもまだまだ心は若かったり、身体もまだ若者のように元気に動く人もいる。この実年齢と精神と肉体の三つが一致していればよいのだが、多くの場合、この三つの高齢要因は、その個人でバラバラだし、人によっても大きな差がある。

年を取っていくことは、如何ともしがたい。日本国の中や、人類社会で生きていく限りは、年を足すことも、引くことも許されない。年は取らせておけばよい。

心の持ち方は、年と違って自由である。若くいたいなら若い気持をもつようにすればよいし、老練な気持を満喫したければ高齢を楽しめばよい。

身体は心のように自由にはならない。そのかわり、年のように融通が全然利かないものでもないだろう。つまり、ある程度は年齢に逆らうような身体になれるようである。それは他人と比較した場合の相対的なものであって、自分の若い時と比べれば衰えているだろう。もちろん、いつ頃からどのくらい衰えるかは、個人による。

60,70歳でも、まだまだ筋肉はできる。しかし、この筋肉は若い時のように、黙っていてもつくものではない。必要な身体の部位を鍛錬すると同時に、心に願ってはじめてできるもののようだ。

その上、短期的な鍛錬ではなく、長期的な継続性が必要である。三日坊主ではできない。

また、筋肉ができるための支援と世話も不可欠である。筋肉のための食べ物にも注意しなければならない。特に、蛋白質をとることが大事である。蛋白質は筋肉だけでなく、脳にも重要である。

若い時は何を食べても栄養になり、血肉になっていったし、少しぐらい食べなくても、筋肉はあまり落ちなかった。だが、年を取るに従い、食べ物の影響はますます大きくなるようだ。食べたものの結果が、すぐ表れるようになるようである。

もう一つ大事なのが、水分である。水やお茶やスポーツドリンクなどで、水分を十分とることである。多少多めに取っても、稽古すれば余分な水分はすべて汗や尿になって出てくれるから、安心して飲めばよい。特に、夏はスポーツドリンクを沢山飲むとよい。疲れが違うし、疲労回復も早い。また、足がつることもなくなるようだ。