【第237回】 感謝

近頃は偉い人が増えたのか、みんな偉くなったのかわからないが、人やものに感謝をしなくなったり、お礼を言わなくなってきたようだ。我々世代は、「有難う」と頻繁にいうようだが、若い者がいうのをあまり聞かなくなった。

合気道は宇宙の法則や条理を見つけ、身につけていく道である。この宇宙をもっと身近に捉えると、大自然ということができるだろう。これは真理であり、これを神とも仏ともいうのだろう。

われわれはこの宇宙の力、大自然の恩恵なくして生きていくことはできない。どんなに金があっても、力持ちでも、威張っていても、その恩恵が少しでも無くなれば生存できないのである。

誰ひとり、否、一木一草に至るまで、宇宙の法則を離れては生きていけないのである。宇宙に感謝しなければならない。

宇宙、大自然に感謝するということは、宇宙、大自然に礼をつくすということであろう。人類にとっての大自然とは、自分達をとりまくすべてのモノであり、日月星、海、山、川、草木、鳥獣、空気、水、食べ物、飲み物などなどであるので、それらに礼をつくし、失礼のないようにしなければならない。食べ物を粗末にしたり、山を荒らしたり、川や海を汚したり、動物や植物を絶滅させたりすることは、大自然、引いては宇宙に失礼である。

どうも鳥獣や一木一草の方が、大自然に感謝しているように思えるし、少なくとも大自然に失礼なことはしていない。

大自然のものに失礼のないようにし、常に感謝の気持ちを忘れないことが大切である。食べ物に感謝し、お礼をいい、きれいな水や空気にも感謝することである。

武道では、礼にはじまり礼に終わるとされるが、つまりは宇宙の法則、大自然の法則に則っていなければならないということである。従って、無礼を働くことは、それに反することになるから、宇宙、大自然への冒涜となる。正しくないし、美しくないわけである。これができないから、人にも感謝をしないのかもしれない。

すべての場面で、感謝をし、礼を尽くしていきたいものであるし、それを後進にも伝えていきたいものである。