【第227回】 橋渡し

人類は数百万年前に地球上に出現して現在に至っており、現在の地球上には60億人以上いるそうだ。しかし、人は生まれて100年足らずで消えていく。だから、現在生存している人達は、人類が発生してから数万世代以上の世代交換をしてきていることになる。

合気道でも、開祖植芝盛平翁が合気道をつくられ、直弟子にそれを伝授し、その直弟子がその弟子や生徒に伝承してきたが、開祖の直弟子の方々はだんだん少なくなってきて、今ではその直弟子のお弟子さんの3世代目が主に教えておられるということができよう。私の場合は、開祖に直接教わってはいるものの、期間も4,5年と短いし、また、主に2世代目の先生に教わっていたので3世代目と考えている。

3世代目の稽古人、合気道同士は、開祖の教えを直接受けられた2世代目の先生や先輩方から、開祖の教えを少しでも多く、そして正確に受け継がなければならない。そしてそれを、我々の次である4世代目へ伝承しなければならない。そして4世代目は5世代目へ、5世代目は6世代目へ・・・と継承していくのである。もし、このうちの1世代が役割を果たせなければ、伝承は途絶えてしまい、消失することになってしまう。

次世代に伝承するのはそう容易いことではないし、大いに責任がある。まず、前世代の教えを正確に身につけなければならないことである。人は安易な方に走りがちなので、よほど注意しなければ自己流になり邪道になってしまうからである。

また、前世代の教えを、前世代の方から教わったやり方で伝えようとして、難しい。時代が変われば、考え方や価値観などが違ってくるので、その世代や時代に合った伝え方をしなければならないだろう。2世代目が教わったように、武術的には敵を殺す(自由を奪う)ことを前提にしたやり方では、4世代目は納得しないだろう。

前世代に教わったことを、自分も次世代にも分かるように、変換したり、凝縮したり、増幅したり、整理して伝承する必要があろう。

伝え方は変わらなければならないだろう。しかしながら、真理は変わらないはずであるから、真理を変えて伝えてはならない。真理とは、宇宙の真理である。合気道は宇宙の真理を求める道であり、宇宙と一体化する道である。この道に外れないよう、この道に乗るよう伝えていかなければならないはずである。

合気道同士の役割は、前の世代と次世代の橋渡しということであろう。合気道を教える立場の人達は言うに及ばず、道場に稽古に通っている人々も、その橋渡しをするつもりで稽古に励んでいかなければならないのではないだろうか。