【第191回】 高齢者の役割の一つの例(No.1)
現代社会は若者社会と言われる。パワー、スピード、知識の社会である。高齢者はこれについていけず、社会の隅に追いやられていることが多い。みんな気がついているように、このような若者社会には問題が多く、何とかしなければならないと思っているのだが、よい方法が見つからないのが現状であろう。
開祖は、今の社会を物質文明の社会であるという。物質(魄)が心(魂)の上にあって、心をモノが牛耳っているから争いが絶えない、と言われるのである。これからは、心(魂)がモノ(魄)をコントロールする、魂が魄の上にくる世界にならなければならないという。これは、まさに高齢者が活躍できる社会であり、力ではない心(精神)、知識だけではない知恵、競争ではなく共生、自己満足ではなく人の立場に立って考える愛の社会であろう。
高齢者の役割はますます大きくなるだろうし、そうならなければならない。力は今以上つかないが、精神力は若者よりあるだろうし、これからつけようと思えば幾らでもつくだろう。新しい知識は難しいとしても、知恵はいくらでもつくものだ。競争する必要もだんだん無くなるはずだし、誰とも仲良くなりやすいはずである。
自分を鍛え、成長させる努力は最後まで続けなければならないが、それはもはや、金のためや名誉のためではないはずだ。すなわち、後進に伝えるためでなければならない。自分の失敗や成功した体験を、後進に伝授することである。もしそれを伝授しなければ、後進は同じ間違いや失敗をやることになり、宇宙的観点から見れば無駄ということになるだろう。
後進に伝授することにはいろいろあるし、人によって出来ることが違う。今回は、私が数年間外国生活をし、またその後も外国人と一緒の仕事を通して得たことを、高齢者という立場から若い後進に伝授したいと思う。高齢者が後進に伝授する一つの例になればよい。
尚、このテーマは、『ツールエンジニアリング』誌(2001.3.)に「国際的なビジネススタンダードのためのもう一つのソフト」と題して私が書いたものであるが、それを抜粋・修正して紹介する。
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日本と欧米、あるいは東洋と西洋の社会や習慣、考え方には、次のような対照的な違いがあり、ビジネスもこの中で展開されることになる。
- 物質主義、知識・パワー・若者の社会
極端に言って、西欧はパワーの社会といえる。老人の知恵よりも、むしろ新しい知識が尊ばれる。目に見える結果を重視することになり、すべてのものは数字で表わされ、その優劣を比較することになる。
ビジネスの上では、個人的な人間関係や家庭の事情などを考慮に入れることはあまりなく、厳しい社会といえる。
- 競争社会、緊張の社会
欧米社会は、自分を主張し、自分の権利を主張しなければ、相手に自分の権利を侵食されてしまうというような、対決と競争の社会であるといえる。従って、欧米には強力な指導者が必要になるわけである。
日本は、和の社会ともいわれ、自分を許容範囲限界内まで押さえ、できるだけ相手との調和を図ろうとする“思いやり”の社会である。
- 個人の責任
ヨーロッパでは、人は神の前においては平等であると考えるキリスト教が根本にある。しかし、その半面、組織として機能するときは、人間性よりも能力が考慮される厳しさが求められ、職責を完全にこなさなければ職を辞めなければならない。
- 調和は日本では善、西欧では悪
欧米諸国では、オープンな論議が基本である。政治家も役人も企業家も、自分の考えや見通しをオープンに話し、議論し、徹底的に意見を出し合う。衆議一決は、独裁につながるとして、かえって用心される。
- 個人主義とは分相応ということ
ドイツの国民は収入や地位に応じて、分相応の生活をしている。他人を羨んだり比較することなく、各人が自信をもって生活している。高価な服装、高級車、豪邸などを所有する人は、それにふさわしい人間性や知識、責任感などが社会から期待されている。
- ストック文化の民
ドイツばかりではなくヨーロッパ諸国は、できあがったものは永久に残すべく大切にする。街が戦争や天災で破壊されても、原型通りに復元してしまう。執念とも思えるその精神に驚くほかない。この精神は、インフラや建物などのハードだけに留まらず、ソフト(例えば工業デザイン)にも現れている。
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これらのことは、学校でも家庭でも教えていないが、もし、子供や孫が海外で生活する場合は参考になるであろうし、知っておかなければならないことであると思う。また、合気道普及のために外国に行く若者にも知って欲しいことである。
次回は、この記事の続きとして「グローバルビジネスのためのマナー」というテーマで、日本人が海外で注意しなければならないことを紹介したいと考えている。
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