【第186回】 難題解明は異分野から

合気道は、技の練磨を相対稽古という方法で練磨していく。自分の考えたことを技で相手に試したり、相手から学んだりして進んでいくのである。

しかし、自分の考えてやってみたことが上手くいく場合もあるが、はじめのうちは中々上手くいかないものである。技の型(形)のアウトラインを覚えただけで、「技」を知らないし、合気道の体もまだ十分にできていないからである。

この時期は、技の型を繰り返し稽古することによって、肺や心臓が丈夫になるなど、体がどんどん出来てくるし、力もついてくるので、ほとんどの問題は力で解決できるだろう。

ある程度の力がついてくると、少しづつ別な問題の壁が現れてくる。力だけでは解決できない問題である。問題は人により違うだろうが、よく聞く疑問は、合気道の技が効かないので、他の武道やスポーツをやらなければならないのではないかとか、合気道では強くなれないのではないかとか、いくらやっても上手くならない等などである。

その上の更なる問題の壁は、いろいろな問題がつぎつぎに現れ、一つを解決して打ち破っても次にはもっと厚い壁が立ちはだかり、それが終わりなく繰り返されることである。

合気道は技の練磨であるといわれるわけだから、技を練磨しなければならないことになる。しかし、開祖はそう言われただけで、技とはどういうものなのか、技をどう練磨するのかを、具体的には言い残されなかった。残されたのは技の型と技の思想である。

従って、我々合気道同人は技の型の稽古を通し、また開祖の言われる思想に従って、技の本質をみつけ、「技の技」を身につけながら技の練磨をしていくべきではないだろうか。

技は宇宙の運行を形に表したものである等と言われるわけだが、宇宙の運行などどこの道場でも教えてはくれないだろう。しかし、宇宙の運行の十字や二律背反などがわからなければ、技にならないわけである。

こうして難問がどんどん出てくる。その難問の壁はどんどん厚くなるが、それを破らなければ先に進めず、合気道の上達はないのである。

難問解決をするためには、まず、その疑問を絶えず頭に留めて置くことが重要である。意識的であれ、無意識的であれ、問題を持ちつづけることである。その問題を避けて通れば、それで解決はできないだろう。

絶えずそのことを考えていると、不思議と答えが出てくるものである。ただし、答えが出てくるのは多くの場合、全然別の分野の人と話したり、本を読んだり、テレビを見たり、歩いているとき等である。その問題と直接関係ないことをやっているときに、閃くものである。ということは、合気道上達のためには、異分野のことを勉強しなければならないということになろう。

例えば、宇宙のことを研究しているのは合気道だけではない。宇宙科学、天文学、宇宙物理はその専門である。絵画や書道、音楽家なども宇宙を目指している。それらの異分野の人たちの話を聞かなかったり、本を読まないのはもったいないことではないか。

開祖の周りには、いろいろな分野の超一流人が集まっていた。集まった異分野の方々は、自分たちと分野を異にする合気道から得ることが多く、自分たちの問題解決に役立ったものと考えたのだろう。また、恐らく開祖もそれらの異分野の人たちから多くの問題解決のためのヒントを得られたのではないかと思う。

我々も同分野の人たちだけでなく、出来るだけ多くの異分野の人と直に会ったり、映像や書物で間接的にお付き合いするのがよいということになろう。

難題は異分野が解明してくれるかもしれない。